八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十話 まさかのことその十一
「それではです」
「ならず者程度ではですね」
「畑中さんの相手にはなりませんね」
「その自信があります、ヤクザ屋さん程度では」
「その映画みたいな」
「私は勝てます、専門に武道や格闘技、訓練を積んだ相手でないと」
それこそというのだ。
「私は勝てます」
「相手が何人いても」
「はい」
まさにという返事だった。
「気も使えますし」
「それも大きいですね」
「気を飛ばせば飛び道具にもなります」
「そうでしたね」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「ご安心下さい」
「そうですか」
「はい、その時は」
僕に確かな声で答えてくれた。
「止様のお力になってきます」
「そうですか、しかし相手はヤクザ屋さんでもですか」
「従えられます」
「尋常な相手じゃないですね」
僕はこのことを心から思った。
「ヤクザ屋さんとも付き合いがあって」
「言うことを聞かせられるなぞですね」
「昔はそうした人も多かったらしいですが」
力のある人でだ、そうした裏の社会と表の社会の境界がそれ程でもなかったのも過去の時代のことだ。
「今もですか」
「そうした家なのです」
「珍しいですね」
僕はまた言った。
「今だにっていうのは」
「そうですね、地域の暴力団ですが」
「秋田の」
「はい、あの辺りに幅を利かせている」
「何処にでもいますからね、ああした人達は」
「残念ながら」
それこそ人のあるところにヤクザ屋さんありだ、日本だけのことじゃなくて世界のどの国でも言えることだ。
「ですから」
「秋田にもいてですか」
「そうしてです」
「秋田県の社会の裏に根を張ってて」
「お母さまのご実家はです」
「そうした人達にも言うこと聞かせられるんですね」
「元々は大庄屋で造り酒屋、大地主でした」
「ああ、古い家で」
「はい、秋田でも有数の資産家で戦後もです」
「力を持っていて」
「今もです。戦前は地方財閥だったのです」
秋田の方でというのだ、戦前の日本は東京の方だけでなく地方にも大小の財閥と言っていい家があったのだ。
「お母様のご実家は」
「もう完全に秋田に根を張っていて」
「ご結婚もです」
「他の地域から来た人は入れなかったんですね」
「止様もです」
「そうですか、古い考えですね」
僕にはこうとしか思えなかった、八条家にしてもだ。
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