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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十話 まさかのことその十

「むしろ使っていると言うべきか」
「そうした人達まで」
「とかく秋田では相当な力のあるお家でして」
「それで親父もですか」
「そうもされようとしてです」
「お袋もですか」
「無理にです」
 お袋の意志を無視してだ。
「そうされたのです、ですから」
「畑中さんもなんですね」
「腹を立てています」
 また僕にこう話した。
「それも非常に」
「そうなんですね」
「若し止様がお許しになられれば」
 その時はというのだ。
「私もお供をしてです」
「お袋の実家の人達からお袋を助け出すことにですね」
「助太刀をさせて頂きたいです」
「直新陰流で」
「そうです、並大抵のヤクザ屋さんなぞ」
 畑中さんは僕に強い声で話してくれた。
「何人いようが拳銃を持っていようが」
「勝てますか」
「そうした手合いと何度か戦ったことがあります」
「えっ、本当ですか!?」
「はい、戦場において」
「ああ、畑中さんあの戦争に行ってましたね」
 第二次世界大戦だ、考えれば考える程日本はあれだけの数の大国と一度に何年も戦えたと思う。色々戦略戦術ミスはあるけれどそれでもあれだけの戦争を何年もしたこと自体が信じられないものだと僕は思う。
「そうでしたね」
「そうです、もうそれこそです」
「拳銃を持った相手を一度に何人も相手にすることも」
「何度かありました、死を覚悟したことも」
「あったんですね」
「日本で拳銃を持つ人は限られています」
 警官か自衛官かヤクザ屋さん位だ、ヤクザ屋さんが持っているのは言うまでもなく非合法によってである。
「ですが戦場では違います」
「そうですよね、それこそ」
「しかもピストルではありません」
 実はピストルは殺傷能力は低い、射程は極めて短く相当近距離じゃないと当たるものではない。とはいっても近距離では当然相手を殺せる。
「自動小銃でした」
「もう一度に何発も撃てますね」
「はい、その相手に囲まれて」
「刀だけで、ですか」
「切り抜けたことも何度かありますので」
「だからですか」
「ある映画の様な事態になろうとも」
 ここで畑中さんが言うある映画は何かというと。
「広島を舞台とした」
「ああ、あの映画ですね」
 僕も知っている映画だった、五作も出たヤクザ映画の金字塔だ。仁義という言葉でもう殆どの日本人がピンと来る。
「あの映画みたいにですか」
「ピストルを持った素人が何人いても」
「畑中さんにとってはですか」
「当たらなければいいのです」
 実に素っ気ない返事だった。
「それだけですから」
「大丈夫ですか」
「はい、ピストルはよく狙わないと当たりません」
 とんでもないことを平然として述べた。
「その狙いを定める間にです」
「畑中さんは難を逃れられますか」
「木刀一本があれば」
 それだけでというのだ。
「何でしたら素手でも」
「大丈夫ですか」
「そうです、ですからお母様のご実家に行くことになりましても」
 そして相手がどれだけ過激な暴力で対してきてもというのだ。
「直新陰流免許皆伝の腕ならば」
「大丈夫ですか」
「はい、その自信があります」
「確かに。畑中さんなら」
 僕も頷けた、畑中さんという人を知っているだけに。
「いつも十一キロの木刀振っておられますしね」
「千回二千回とですね」
「スクワットもされてますし」
 こちらも千回二千回とだ、正直あの戦争に参加した程の年齢の人には思えない位の体力と運動能力だ。 
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