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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八十話 まさかのことその九

「血です」
「血、ですか」
「八条家はよく名家と言われますね」
「はい」
 実際にそう言われている、奈良時代にはじまる公卿の家でその古さで言うと武家の名門の家系とは比べものにならない。
「それはそうですが」
「しかし秋田の家ではないです」
「だからですか」
「お母様のご実家は秋田の古い家で」
「秋田にですか」
「そこに深く根を張っていてです」
 そうした家でというのだ。
「八条家は秋田の家ではないとです」
「言ってですか」
「ご結婚にあくまで反対され」
「親父の命まで、ですか」
「奪おうとされていました」
「そうだったんですね、余所者ですか」
 この意識は何処にでもある、そして何時でも大なり小なりあってだ。そうして身内以外の者にはとことん邪険になる。
「つまりは」
「はい、余所者はです」
「徹底的にですね」
「排除する家でして」
「だから親父との結婚をですか」
「あくまでお許しにならなかったのです」
「そうだったんですね」
「はい、ただ」
 畑中さんは僕にさらに話した。
「何とかそうはなりませんでした」
「親父を殺そうとしたところで」
「はい、情報が洩れまして」
「お袋のことを見付けた人がですか」
「その時もそのお話を聞かれて」
 それでというのだ。
「慌てて八条家の方に連絡したのです」
「それで総帥さんのお耳にも入ってですか」
「総帥御自ら秋田にヘリコプターで行かれました」 
 神戸から即座にというのだ。
「そうしてです、お母様のご実家に行かれて」
「直談判ですか」
「それでご結婚に至りました」
「そんなことがあったんですね」
「若しその方がおられないと」 
 お袋を見付けてくれたその人がというのだ。
「どうなっていたか」
「親父は殺されていたかも知れないですね」
「はい、止様は勘が鋭い方なので難を逃れられたと思いますが」
「そうでしょうけれどね」
 親父は勘もいい、その鋭さは相当なもので彼氏がいる女の人がそのことを隠して言い寄ってきても即座に気付く位だ。
「それでも若しも」
「万が一がありますからね」
「そうです、危なかったですね」
「秋田では相当な力のある家で」
「人を殺すこともですか」
「いざとなればです」
「行っても隠せるんですね」
 揉み消すと言うべきか、物騒な話だ。
「そうも出来るんですね」
「先程行方不明のお話をさせて頂きましたが」
「そのことですね」
「はい、人を殺してもです」
「その死体を隠すとですね」
「行方不明となります」
 公にはだ、実際にそうなっている殺人の被害者は多いだろうから怖い。
「そうなります」
「山に埋めたりダムや海に沈めたり」
「そうしてしまえばです」
 まさにだ。
「死体という決定的な証拠が消えます」
「そうしたことが出来る家なんですね」
「そうです、そうした筋とも関わりがあるので」
「ヤクザ屋さんですか」
「地元の」
 秋田のというのだ。 
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