八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百七十九話 マーマイトとキーウィその一
第百七十九話 マーマイトとキーウィ
エリザさんは僕とジョーンさんにだ、少し不満そうなお顔になってこう言った。
「食べもののお話をして思ったけれど」
「どうしたんですか?」
「さっきお話にも出したけれど」
こう前置きしても言ってきた。
「マーマイトを食べてない、最近」
「ああ、あれですわね」
ジョーンさんはマーマイトと聞いてすぐに応えた。
「そういえばですわね」
「学校にもないし」
「八条荘でも出ませんわね」
「色々お料理はあるのに」
「オーストラリアの食べものも」
「けれど」
それでもというのだ。
「マーマイトはない」
「そうですわね」
「何故ないか」
「それはおそらく」
ジョーンさんはこうエリザさんに言った。
「味が」
「癖があるから」
「もっと言いますと」
「まずいから」
エリザさんの方からこう言った。
「だから」
「はい、マーマイトはお世辞にも」
「はっきり言うとまずい」
「そうですから」
「イギリス人の食べもの」
食べものがよくないということで世界的に評判のこの国のというのだ。
「まさに」
「だからですわね」
「そう、けれど」
「味がよろしくなくてもですね」
「時々食べたくなるから」
だからだというのだ。
「ふと不満に思ったの」
「今、ですわね」
「そうなの、けれど本当にないから」
「八条荘でも小野さんも出しませんし」
「食堂には用意もされていないし」
「パンに塗るものは沢山ありますけれど」
各種のジャムもあれば蜂蜜もあるしバターやマーガリンもある、パンに塗るものもかなり揃っているのだ。
「ですが」
「マーマイトだけはない」
「ですわね」
「というかマーマイトは」
僕はエリザさんにそのマーマイトのことを話した。
「メジャーとはです」
「言えないのね」
「はい、日本でもそうですし」
それにだとだ、僕はさらに話した。
「他の国でも」
「オーストラリア以外でも」
「はい、メジャーじゃないですから」
「そういえば八条荘も八条学園もお米が主食の国多いわね」
「東アジアや東南アジアの子も多いですから」
八条荘でもそうだ、むしろこの下宿は半分以上がそうだ。
「それにアメリカや中南米からの子達も」
「マーマイトについては」
「知らないですから」
こうした国々はパンが主食だけれどだ、中南米だとジャガイモやトウモロコシも入る。
「知っていてもです」
「まずいと思って」
「そうなりますね」
「そうなの、確かにまずいし」
エリザさんはまたこう言った。
「あれは」
「それでもですか」
「お国の味だから」
オーストラリアの、というのだ。
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