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夢幻水滸伝

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第七十話 山と海その十一

「四日市に来て頂きたいとです」
「それが吉川君の返事なん」
「はい」
 その通りだとだ、使者に出ていた官吏が答えた。
「そう言っておられます」
「そうなん。ほなな」
「四日市に行こうか」
 綾乃のすぐ傍に控えていた芥川も言った。
「今から」
「そうしよな」
 こうしてだった、二人はそれぞれ大蛇と狐の背に乗って四日市に向かった。
 四日市に着いたのはすぐだった。だがその四日市を見て綾乃は言った。
「工場はちょっとあるけど」
「ちょっとやな」
「そやね、大坂とか神戸よりずっと少ないわ」
「それは関西が日本で最先進地域でな」
「工業も盛んでか」
「この辺りはまだまだやねんやろな」
 工業の発展具合がというのだ。
「しかも工業も軽工業やな」
「絹とか木綿とか扱ってるみたいやな」
「そうやな、こっちの世界の四日市はまだまだな」
「工業が発達してないんやな」
「これからや。それでな」
「これからあの街に入って」
「吉川と会おうな」
 こちらの世界の彼と、というのだ。
「そうしよな」
「ほなな」
 綾乃も頷く、そしてだった。
 二人は四日市の街に入りそこにある城に向かったが城は天守閣もない極めて小さな城だった。その正門のところにだ。
 黒い詰襟の軍服と前に唾がある帽子を被ったマーマンの男がいた、耳のところが鰭になっていてそれでマーマンとわかる。 
 その彼がだ、こう言ってきた。
「待っていた」
「自分が吉川明文やな」
「そうだ、あちらの世界では水産科の三年だ」
 吉川は自ら名乗った。
「そこにいる、そしてこの世界ではマーマンでだ」
「それ昔の大日本帝国海軍の軍服やな」
 芥川は吉川の軍服を見てすぐにそれだとわかった。
「うちの学園の制服の一つでもあるけれどな」
「そうだ、職業が提督であるしな」
「それでか」
「服はこれになっている」
「成程な」
「とにかく詳しい話はだ」
「ああ、城に入ってやな」
「そこで話そう」
 こう話してだ、そしてだった。
 芥川と綾乃は吉川に案内されて四日市の城に入った、そしてその中で三人での話をはじめた。そうしてだった。
 吉川は城主の間で二人と対したうえで話した。
「まずは志摩に出た、そしてだ」
「水軍の棟梁になったか」
「瞬く間にな、一騎打ちでも戦でも私に適う者はいなかった」
「星のモンの力でやな」
「一騎打ちで敵の猛者達を何度も倒してだ」
 そしてというのだ。
「戦もだ」
「勝っていってか」
「志摩の水軍を統一し棟梁になった」 
 そうなったというのだ。
「そうしてだ」
「そこから伊勢もか」
「陸での戦はあまり得意でなかったが」
「提督は海で戦うもんやしな」
 言うならば海の将軍だ、海軍なり水軍なりを指揮してそのうえで戦う者達だ。 
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