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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica24とある母親の覚悟~Mother's love~

 
前書き
久しぶりのナンバリングタイトルだったエースコンバット7。
あー楽しかったな~。AHと違って過去作との繋がりが判ると、テンションがグングン上がります。
次はキングダムハーツ3だな~。今すぐプレイしたいけど、このエピソードが終わってからだな~。
プロットから見て、おそらくですけど6、7月中にはこのエピソードも終われそうです。 

 
†††Sideなのは†††

仕事を終えて自宅に帰って来ると、玄関に2人分の靴が綺麗に揃えられて置かれてた。そっか、今日は・・・。私も靴を脱いだ後に揃えて、リビングへと向かう。そして「ただいま! フェイトちゃん、アリシアちゃん!」って、キッチンでお料理をしてる2人に挨拶した。

「おかえり、なのは♪」

「おかえり~! シチューそろそろ出来るよ~♪」

「うん、ありがと、アリシアちゃん。私も何か手伝うよ」

ジャケットを脱ぎながらそう言うとフェイトちゃんが「大丈夫だよ。先に着替えてきたら?」って気遣ってくれたし、アリシアちゃんも「うがい手洗いも忘れずに♪」ってお母さんみたいな事を言われちゃったし、「はーい♪」笑顔で応えて洗面所へ向かう。うがいと手洗いを終えて、私室で私服に着替えてからリビングに戻る。

「良い香り~♪」

「冷めないうちに食べよう、フェイト、なのは」

「「うん!」」

テーブルに着いて「いただきます!」と手を合わせて、フェイトちゃんとアリシアちゃんの作ってくれたシチュー、生春巻き、バターライス、サラダを談笑しながら美味しくいただく。

「楽しい食事中にしていい話題じゃないかもしれないけど・・・。今日、ザンクト・オルフェンで仮面持ちが出たって話を聞いたんだけど、シャル達からはなんの連絡も無いの? フェイトママ、なのはママ?」

「うん。シャル達からの連絡はないよ。ヴィヴィオから、護衛としてシャルとルミナとトリシュの3人と一緒に、お友達のみんなとお買い物に行くっていう連絡は貰ったけど・・・」

「フェイトちゃんと同じく。メールや通信も繋がらなくて・・・」

何かがあればシャルちゃんかルシル君から連絡が来る手筈になってる。便りが無いのは良い便りなんていうことわざがあるけど・・・。まぁシャルちゃんとルミナさんとトリシュさんっていう過剰戦力とも言える護衛が側に居てくれるんだし、たとえ襲われても返り討ちにしそうだし。

(それでも不安はあるし、心配はしちゃうよ。だってママだもん)

「そっか~。じゃあ今度は私が連絡してみようか・・・?」

アリシアちゃんがファンデーションケース型へと形を変えた“フォーチュンドロップ”を、アリシアちゃんの座ってる椅子の背もたれに掛かってるハンドバッグから取り出した。

「クリスにも通信機能あったよね、なのは?」

「うん、メール機能も搭載してるよ」

「オッケー。ドロップ、セイクリッドハートに通信をお願い」

≪ほーい!≫

“フォーチュンドロップ”がヴィヴィオの“クリス”に通信を繋げていると、テレビの映るニュース番組から・・・

『本日、ミッドチルダ北部ベルカ自治領・ザンクト・オルフェンに、最後の大隊の構成員およそ18名が現れました。偶然現場に居合わせた聖王教会教会騎士団所属、オランジェ・ロドデンドロン隊がこれを制圧しました』

テレビモニターに「あ、シャルちゃん!」達オランジェ・ロドデンドロンのメンバーの顔写真が映った。対最後の大隊となれば今はもう、管理局じゃなくて教会騎士団となってる。騎士団は、陸士隊の管轄区を無視して自由に捜査も追跡も出来るし、都市部での魔力出力制限も関係ない。局が後れを取るのは必至だった。

『聖王教会本部より、今回逮捕した最後の大隊のメンバーの身元が発表されました』

ニュースキャスターが読み上げていく名前には聞き覚えのある名前もいくつかあって、さらに『アリサ・バニングス、ミヤビ・キジョウ、ティアナ・ランスター。以上18名です』って、最後に読み上げられた名前を聞いて、私たちは持っていたスプーンを落とした。

「アリサ・・・」

「ティアナ・・・」

「ミヤビって、シャル達の局員時代の同僚の名前でしょ・・・?」

アリサちゃんやティアナ達の顔写真も映し出された。もう完全に犯罪者扱い。読み上げられた18名の内、15名がミッドチルダの局員、1名が本局、残り2人は魔導犯罪者だった。そして聖王教会騎士団団長、リカルド・トラバントのインタビューが流れた。

『我々と同じ、正義を執行する組織である時空管理局。その地上部隊の総本部であるミッドチルダ地上本部および各陸士部隊に所属する管理局員が、あろうことか殺人を前提に悪を裁くという愚考を働いているのはすでに周知の事実。最後の大隊に入り、すでに何件かの殺人事件を起こしている。到底看過できる問題ではない』

「「「・・・」」」

アリサちゃんやスバル、ティアナだって、絶対に望んで最後の大隊に下ったわけじゃない。そう大きな声で叫びたい。けど世間にはきっと届かない。最後の大隊が崩れ、アリサちゃん達が大隊に入った原因を解明しない限りは・・・。

『管理局と教会騎士団はかつて、プライソン戦役にて組織として分け隔てなく協力した。普段は管轄区を縄張りと称して醜く争っていた陸士隊もそんな問題を後回しにして、どこの部隊であろうとどの管轄区だろうと関係なく手を取り合って戦っていた。だというのに、いざ戦役が終われば元通り。以前ほどの縄張り意識は強くは無いようだが・・・。よもや犯罪者を多数も出すとは。ミッドチルダ地上部隊の歴史もそろそろ終わりが近いようだ。これまで逮捕した局員は口を揃えて言っていたよ。管理局に未来は無いと。ならば犯罪組織ではなく我々騎士団の元へ来てくれたら良かったのだが・・・。実に残念だよ。皆、素晴らしい魔導師だったのに』

トラバント団長のインタビュー映像が終わって、ニュースもそのまま終わった。さっきまでは温かかった食卓が完全に冷え切ってしまってた。このままじゃ本当にミッドの管理局組織が終わってしまう。

≪クリスとの連絡が繋がったよ~≫

“フォーチュンドロップ”がそう言った直後、モニターが展開されて『はい、ヴィヴィオです。アリシアさん、何かありました?』ってヴィヴィオが映った。ヴィヴィオの顔を見られたことで心底ホッとした私とフェイトちゃんは「ヴィヴィオ~♪」って手を振った。

『なのはママ、フェイトママ!』

するとヴィヴィオも笑顔になって手を振り替えしてくれた。今通信していても大丈夫か聞いてみると、『うん。夜ご飯を食べた後での休憩中だから』って言って少しモニターから引いた。

『『『『こんばんはー!』』』』

『こんばんは。なのはお母様、フェイトお母様、アリシアさん』

『こんばんはです!』

モニターの外からコロナちゃんとリオちゃんとイクスちゃん、それにアインハルトちゃんとフォルセティが顔を出した。あの子たちとも「こんばんはー!」って挨拶を返す。アリシアちゃんが「フォルセティがハーレム築いてる」ってボソッと漏らした。ルシル君もチーム海鳴で唯一の男の子だったし。フォルセティも将来はいろんな子にモテて苦労するのかな・・・。

「ヴィヴィオ。その、今日はどんな調子だった? ザンクト・オルフェンでその・・・最後の大隊が現れて・・・あの・・・」

フェイトちゃんが言いにくそうにしていると、ヴィヴィオが『わたし達、その場に居たの』って耳を疑うような言葉を言った。聞けば買い物をルーテシアやリヴィアと一緒に終え、その後に憧れのインターミドルのトップファイターであるヴィクトーリア選手とハリー選手たちと過ごした後に、先ほどニュースになっていた大隊の襲撃があったとの事だ。

『アリサさんとティアナさんが、ルシルさんやアイリ、トリシュさんの手で倒されるのを見ちゃって・・・』

『ちょっと、というか・・・かなりショックだったよね』

ヴィヴィオとフォルセティは2人のことをよく知るからこそ、模擬戦での撃破じゃなくて本当の戦闘での撃墜でショックを受けてしまっていた。どう言って慰めようかって頭をフル回転させてるところで・・・

『でもだからこそ、わたしは強く思ったの。わたし、アリサさん達のような無理やり最後の大隊に入れられて戦わされる被害者をこれ以上出さなせない・・・』

伏せられてたヴィヴィオの瞳が私たちに向けられた。紅と翠の瞳に宿るのは断固とした意思。これから何を言うのか判らないけど、たぶん・・・ヴィヴィオを止めることは出来ない。

「待って、ヴィヴィオ。無理やり入れられたってどういうこと? アリサ達が大隊に入った原因が判ったの?」

『えっと・・・』

『捕まえたアリサさんとティアナさん、それにミヤビさんを、教会本部へ移送される前にお父さんが調べたんだけど・・・。その時にお父さん達が、アリサさん達を取り戻す・・・って言ってたの聞いたんだ。たぶん、僕たちが見たアリサさん達は・・・偽者』

『うん・・・。あっ、あああああああ! ちが、あの、なのはママ、フェイトママ、アリシアさん! 今の、ルシルさん達からなのはママ達にも内緒って言われてたの! だから内緒!』

『あっ、そうだった! 今の秘密! 内緒でお願い!』

ヴィヴィオとフォルセティからの懇願も頭に浸透しないほどの話の内容に、私はルシル君が示してくれたその事実に嬉し涙を流してしまう。ヴィヴィオが『なのはママ!?』って驚いたから私は「大丈夫。嬉しくて・・・」って努めて笑顔を向ける。

「でもこれ、すごいニュースだよ、なのは。はやて達にもすぐに伝えたいけど・・・」

「そのダメな理由って、私たちチーム海鳴の中にまだ偽者がいるかもしれないから、でしょ? 信じられないし信じたくないけど、警戒するのはしょうがないと思うよ、うん」

アリシアちゃんの言うことには理解も納得も出来る。アリサちゃんがいつ拉致されたのかも知れない上ひょっとしたら偽者と会って話をしていたかもしれない。それが恐ろしい。本物と偽者に気付けないなんて・・・。

『それでね、なのはママ、フェイトママ。さっきの続きなんだけど。わたし、わざと大隊に捕まろうかなって思ってる』

「え・・・?」「はい?」

フェイトちゃんとアリシアちゃんが目を丸くするけど、私はどこかそんな気はしてたことで、そこまで驚きはしなかった。ちょっと過保護なフェイトちゃんが「ダメ! 絶対ダメ! そんな危ない事、許さない!」って怒鳴った。

『でもフェイトママ! アリサさん達を取り戻せるチャンスかもしれないんだよ!』

「っ! だからって何をされるかも判らない連中に、ヴィヴィオを一時でも預けるなんて許せるはずない!」

『・・・判ってるよ。怖い事があるかもしれないって・・・。でももし、万が一にでもなのはママやフェイトママ、アリシアさん、はやてさん達の誰かが捕まって、偽者が本物のフリをするようなことがあったら・・・。それこそ絶対に嫌だもん!』

「ヴィヴィオ・・・!」

『フェイトママ・・・!』

どっちも引かないから睨み合いみたいになっちゃった。だから私とアリシアちゃんで「待って、落ち着こう!」って割って入ったら、フェイトちゃんから「なのはからもダメだって言ってあげて!」ってお叱りを受けた。

「えっと・・・」

「ほら、ヴィヴィオ。なのはもダメだって言うんだから、ちゃんと言う事を聞かないと・・・」

「え~っと・・・、うん。ねえ、ヴィヴィオ。ヴィヴィオが言ってることがどれだけ危険で、ママ達やお友達に辛い思いをさせるかは・・・解かってる?」

ヴィヴィオだけの問題じゃないことは理解してるのだろうか。そこだけはしっかり確認しておきたい。私の問いにヴィヴィオは『解かってるつもりだよ』って一切の揺らぎを見せない瞳を向けてきた。

『あの、私たちもヴィヴィオさんの決意には負けてしまい、ヴィヴィオさんの作戦を了承してしまいました』

『ヴィヴィオの頑固さには負けました・・・』

アインハルトちゃんとイクスが肩を落とした。コロナちゃんやリオちゃんも苦笑しちゃってるし。フォルセティはフェイトちゃんみたく、不安そうな表情をこれでもかっていうレベルで浮かべてる。うちの娘が本当にごめんなさい。

『なのはママ、フェイトママ。お願いします!』

「ヴィヴィオ。お願いだからやめ・・・」

「待ってフェイトちゃん。・・・シャルちゃん達は何か言ってる?」

『アリサさん達が倒された後に提案したんだけど・・・。すぐには答えは出せないから保留にするって、ルシルさんが・・・』

完全に却下したわけじゃないんだ、ルシル君。だからフェイトちゃんは「もう! なんで止めないの、ルシルは!」ってお冠だ。

『それについては俺から話そう』

とそこに、ルシル君が部屋のドアを開けて入ってきたんだけど、フォルセティから『お父さん。ここ女の子の部屋なんだから、ノックしないとダメ』って怒られちゃった。

『あ、すまん。お邪魔します』

『あ、はい、どうぞ』

改めてヴィヴィオ達に入室したことへの挨拶をして一礼すると、ヴィヴィオ達も一礼で返した。そして咳払い1回したルシル君は『本題に戻そう』って私たちに向き直った。

「ルシル。ヴィヴィオの提案を保留じゃなくてキッチリ断って。危ないからダメだって」

『いや? 俺は止めないよ。ヴィヴィオの案は通すことにした。というか、実はな・・・最後の大隊の本拠地を捉えるために以前から・・・その・・・なんだ、ヴィヴィオの言うような囮作戦を立てていたんだ』

「~~~っ!」

フェイトちゃんは顔を赤くするほどまでに怒って、「ルシル!」って怒鳴った。フェイトちゃんに気圧されたヴィヴィオ達がビクッと肩を竦ませる。でもルシル君は涼しい顔をしたままで『ヴィヴィオの決意は無駄には出来ないだろ』って返した。

「許容できる我儘にも限度があるの! もう! ルシルの馬鹿ぁぁぁぁぁ!」

若干涙を浮かべてるフェイトちゃんにとうとうルシル君もたじろいで、『す、すまん・・・』って謝っちゃった。このままじゃルシル君がフェイトちゃんに押され続けて負けてしまいそうだから、「ルシル君」って私が割って入る。

「ルシル君。ヴィヴィオを危ない目に遭わせるんだから、それ相応の安全も確保してくれているんだよね? というか、してなかったら私も全力で怒るから」

『っ!・・・ああ、もちろんだ。当然過ぎる疑問だぞ、なのは、それにフェイト。何の作戦も無いしにヴィヴィオに危ない事をさせるわけがないだろうが』

「ふーん。じゃあどんな作戦を立てたわけ? 以前からって話だし、フェイトとなのはが納得できるレベルのものなんでしょ?」

そう言って呆れるルシル君にアリシアちゃんがそう聞いたんだけど、『それは秘密だ』ってルシル君は首を横に振った。なんで?と思う前に「その作戦までに私たちが捕まったら洩れるから?」って確認してみた。

『そうだ。アリサですら捕まってしまうような状況だ。君たちの実力に疑う余地なんて無いけど、万が一がある。それを考え、本作戦は俺とシャルとアイリ、そしてヴィヴィオの4人だけが知るようにしておきたい』

ヴィヴィオの母親として知ってはおきたいけど、ルシル君の言うことにも一理あるから反論は無い。だから「判った。ヴィヴィオとルシル君たちを信じる」って、私はヴィヴィオ達の作戦を受け入れることにした。

「なのは!?」

「フェイトちゃん。信じてあげようよ。私とフェイトちゃんの娘でしょ?」

「むぅ・・・。はぁ。なのはママがそこまで言うなら私も受け入れるしかないでしょ」

ちょっと膨れっ面なフェイトちゃんの頭を「ありがと~♪」って頭を撫でる。

『なのはママ、フェイトママ。我儘を聞いてくれてありがとう!』

『ありがとう、なのは、フェイト。ヴィヴィオは責任を持って預かる。最後の大隊を潰すまで、いや潰した後でもヴィヴィオを守り抜く。完全に不安は拭えないだろうが・・・』

ヴィヴィオとルシル君が頭を下げたから、私は「はい」って微笑みながら頷き応えた。その後はヴィヴィオやみんなからの『おやすみなさーい!』の挨拶に、私たちも「おやすみなさい!」と返して通信を切った。

「ヴィヴィオ、結構な冒険をするようになったね。自分から捕まりに行って大隊の本拠地を探る、なんて・・・」

「うぅ、なんかもう今晩は眠れないかも・・・」

「フェイトちゃん。もうちょっと強くなろうか、精神的に」

フェイトちゃんの過保護は、フェイトちゃんの生い立ちにも関係してるから強くは言えない。でももう少しヴィヴィオを信じてあげても良いと思う。ヴィヴィオの側には次元世界でも指折りな実力者が揃っているんだし。ルシル君だって馬鹿じゃない。しっかりとした作戦を立てていて、ヴィヴィオもしっかり守ってくれると思う。

「どんな作戦か、いつから始めるのか、それが判ってればもう少し落ち着きを取り戻せると思うけど・・・」

「ルシル君のさっきの様子だと秘密って言われそうだよね・・・」

「もぉ~・・・」

アリシアちゃんと私の会話にフェイトちゃんがテーブルに突っ伏した。とにかく、承諾しちゃった以上はルシル君たちを信じるしかないわけで。

「ホント、お願いするよ」

天井を仰ぎ見た私は深い溜息を吐いた。
 
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