| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百七十二話 ワーウルフの話その八

「いなかったんだ」
「ブルガリアにはでござるか」
「ペナンガランに似た妖怪は東南アジアに多いみたいだけれど」
 近いせいかだ、タイとかインドネシアにもある。
「ブルガリアではね」
「実はでござるか」
「いなくてね」
 それでなのだ。
「そんな妖怪知らないとも言われたよ」
「ううむ、妖怪も創作が入るでござるな」
「口裂け女にしても」
 友奈さんはこの妖怪に話を戻してきた。
「最初は驚かすだけだったわ」
「うちの学園の口裂け女みたいにでござるな」
「それがお話がどんどん大きくなって」 
 どうも噂が広まるにつれて色々な人が尾鰭を付けていったらしい。
「人を襲う様になって鉈とか鎌でね」
「それで人を襲ってね」
 僕も口裂け女のこうした話は知っている、何しろ学園の中に出る妖怪の一つなのでこの学園には口裂け女に詳しい話も広まっているのだ。
「赤い車に乗って移動するとか三人組とか」
「男女カップルの話もあったわね」
「もうね」
 それこそだった。
「誰彼なし人を襲って殺すとか」
「そんな話になっていたわ」
「凄くなったらね」
 もう話がエスカレートしていってだ、都市伝説は本当に話がどんどん凄くなる。
「大鎌でね」
「死神が持つみたいな」
 友奈さんはこう言い加えた。
「それで電話ボックスを真っ二つにしたのだったわね」
「そこまでいったからね」
「もう無茶苦茶ね」
「だから子供達が怖がったんだよね」
 最初に出ると噂になった昭和五十四年はだ、近鉄バファローズ初優勝の年とのことだ。
「集団登校とかになって」
「社会現象だったのよね」
「トイレの花子さんとかテケテケ以上にね」
 この妖怪達も学園にいる、とはいってもテケテケもこの学園にいるものは大人しい。
「凄い話になって」
「それでだったわね」
「もうそこまでいったんだよ」
「電話ボックスをでござるか」
 マルヤムさんはその話に眉を顰めさせて僕達に聞いてきた。
「大鎌で」
「そう、死神が持つみたいなね」
 僕もこの表現を使った。
「真っ二つにしたらしいんだ」
「まさに妖怪でござるな」
「そうだよね」
「というか警察は出なかったでござるか」
「出たよ」
 あまりにも大きな噂になっていてだ。
「捜査していたらしいよ」
「そこまでいっていたでござるか」
「うん、そうらしいよ」
 僕達が生まれるずっと前の話なのでそう聞いているだけだ、親父にしてもまだほんの子供の頃であまり覚えていないらしい。
「どうもね」
「壮絶でござるな」
「そうだよね、けれどね」
「この学園の口裂け女は大丈夫でござるな」
「うん、人を驚かせるだけでね」
 学園の他の妖怪達と同じでだ。
「大人しいよ、狼男にしてもね」
「お茶を飲んでいるだけでござるか」
「見て殴ったらやり返されるだろうけれど」
 それでもだ。
「まあね」
「ドラキュラ伯爵やフランケンとお茶を楽しんでいて」
「人は襲わないよ」 
 そうした話はない、狼男にしても。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧