八条学園騒動記
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第四百八十五話 若し傍にいたらその八
「鉄の処女とかな」
「あれここの博物館にもあるけれど」
「あっちの拷問器具でな」
「あるけれど」
エウロパの他の拷問器具も展示されている、そうしたもので魔女狩りの陰惨さとエウロパの残虐さを教えているのだ。その陰惨さと残虐さはあくまで連合から見た視点でありそれに基づく教育である。
「酷いわよね、あれ」
「そうだよな、他の拷問器具もな」
「しかもあれ潔白を証明する為じゃないから」
「疑われたらだよな」
「その時点でね」
最早だったのだ、実際に。
「もう終わりだったから」
「それが魔女狩りだよな」
「魔女だって言われてね」
「異端審問が来たらな」
「もうそれでね」
まさにその時点でだ。
「連行されて拷問のフルコースで」
「自白させられてな」
「最後は火炙りよ」
「ひでえ話だな」
「そんなのと比べたらね」
「恐竜の餌にするとかな」
ロザリーはフタバスズキリュウの身体と比例して小さな頭を見た、そしてその頭にある多くの小さなギザギザの歯達をだ。
その歯達、餌を食うのに使っているそれを見つつ言うのだった。
「ずっとましだよな」
「魔女狩りに比べてね」
「十字軍も酷かったよな」
「あれキリスト教徒でも皆殺しだったから」
「エルサレムでもだよな」
「アルビジョワ十字軍でもね」
南フランスへの十字軍だ、当時その地域に勢力を持っていたカタリ派を異端としてそのうえで攻めたものだ。
「神があの世で見分けられるって言って」
「何でもか」
「異端でもそうでなくてもね」
「殺してたんだな」
「そうよ、大虐殺だったのよ」
神の名の下において行われたそれだったというのだ。
「百万死んだらしいわね」
「百万か」
「当時の人口からいったら相当よ」
当時のフランス全土で一千万はいなかっただろうがその中の一つの地域でそれだけの人が虐殺されたのだ。
「神があの世で見分けられるって言って」
「言った奴屑もいいところだな」
「だから一々正統か異端とか」
その区別はというのだ。
「出来ないから」
「だからか」
「もう皆異端でも何でもね」
「殺してか」
「とりあえず異端を皆殺しにする」
「そうしたんだな」
「それで実際にそうして」
十字軍の者達が虐殺を行ってというのだ。
「フランス南部は完全にフランスになって異端もいなくなったけれど」
「百万人殺されたんだな」
「またその殺し方が酷かったみたいだし」
「異端審問みたいにか」
「そう、それこそ恐竜の餌にする方がましってレベルでね」
アンジェレッタもフタバスズキリュウの歯を見た、餌と聞いて二人共条件反射的に口の方を見たのだ。
「殺してたのよ」
「どっちが残酷だよ」
「犬に襲わせる処刑は連合にもあるけれど」
「そんな逃げ隠れしている人を襲う為に仕掛けるとかな」
「それはないから」
死刑の方法の一つとして行っているのだ。
「そんな残虐なことはしないわよ」
「ましてや遊びで首切ったり真っ二つとかな」
「親の目の前で子供捕まえて頭を岩に叩きつけたりね」
そうして殺すのは言うまでもない。
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