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永遠の謎

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212部分:第十五話 労いの言葉をその二


第十五話 労いの言葉をその二

「だからこそです」
「我々も戦っているのです」
「バイエルンも」
「そうだ。だがそれは」
 どうかと。公は話すのだった。
「果たして正しいのか」
「プロイセンと戦うことがですか」
「果たして」
「そしてだ」
 公の言葉は続く。
「オーストリアにつくしかないな」
「はい、我々はです」
「選択肢はそれしかありません」
「一つしかです」
「だからオーストリアについて戦っている」
 それでもだとだ。言葉が続く。
「しかし。若しプロイセンが勝てば」
「その場合は我が国は危うい」
「そうだというのですね」
「下手をすれば目の敵にされてしまう」
 こう危惧するのだった。
「それも避けたいが」
「ではです」
「この場合はどうすればいいのですか?」
「一体」
「あの方が正しいのかもな」
 公は考える顔で述べた。
「ここはな」
「陛下がですか」
「正しいというのですか」
「今は」
「どうなるかはわからない」
 公もだ。この戦争がどうなるかというとだ。わかりかねていた。
 しかしだ。このことは彼にもわかった。それで言うのであった。
「だが。プロイセンはだ」
「強いですね」
「思えばオーストリア継承戦争の頃からです」
「強いです」
「しかもだ」
 今のプロイセンはそれに加えてであった。
「今のプロイセンにはビスマルク卿がいる」
「あの鉄血宰相がですか」
「プロイセンにおられると」
「そうだ、これは大きい」
 また言う公だった。
「あの御仁は恐ろしいまでに切れる」
「今回の戦争を仕組んだのはあの方ですが」
「その方がですか」
「おられるからこそですか」
「そうだ、そしてだ」
 さらにだというのだ。公はビスマルクだけを見てはいなかった。
 それに加えてだ。もう一人いるというのだ。
「プロイセンの参謀だが」
「モルトケ将軍ですか」
「あの御仁もまたですか」
「大きいと」
「今のプロイセンは軍の強さだけではない」
 それに留まらない。それが今のプロイセンだというのだ。
「その人もだ」
「無視できない」
「決してですね」
「その通りだ。オーストリアは果たしてどうなるか」
 その彼等と戦うオーストリアの行く末がだ。案じられた。
「それが問題だ」
「それ次第によっては我が国もですね」
「どうなるかわからない」
「そうですね」
「そうだ。果たしてどうなるか」
 公の憂いの言葉が続く。
「我々にはわからない」
「陛下はどう思われているでしょうか」
「それが一番気になりますが」
「一体」
「それが最もわからないが仕方がない」
 公は憂いのある顔のままで話す。
「陛下を信じよう」
「臣民として」
「そうしてですか」
「それしかない。それではな」
 こう話してだった。彼等は今はバイエルンの行く末を案じるしかなかった。だが肝心のバイエルン軍は動かない。戦争に加わらないのだ。
 
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