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夢幻水滸伝

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第六十六話 過去その五

「大坂の主の座を譲り渡したんや」
「星の奴は別格やねんな」
「そや、それでな」
「今大坂を治めてるのは星の奴か」
「何でも双子、兄と妹の翼人の忍者らしいわ」
「兄と妹の双子なあ」
 そう聞いてだ、芥川は自分達本来の世界のことそれも極めて身近なことを思い出してそのうえで話した。
「何かな」
「どないしたんや」
「いや、実は僕の後輩でおるんや」
「兄と妹の双子がか」
「そや、漫才部におるんや」
 その二人はというのだ。
「兄妹で漫才やってて将来は漫才師になりたいらしい」
「そんな後輩がおるんか」
「その連中思い出したわ」
 こう狐に話した。
「その話聞いてな」
「成程な」
「まあそれで今大坂はやな」
「その二人が治めてて呑気やけどええ感じに治めてるわ」
「そういえば賑やかやな」
 街を見ればそうだった、人々は笑顔で行き交い店はどの店も繁盛していて活気に満ちている感じである。
 そしてその人々も見て言う芥川だった。
「人間だけやないな」
「そやから言うたやろ」
「この世界は色々な種族がおるんやな」
「そや、それでや」
「色々な人がおるか」
「自分も天狗やしな」
 見ればエルフやオーク、ホビットにゴブリンに家鴨人にと様々だ。その状況はまさに種族の坩堝であった。
 その坩堝の中でだ、狐は芥川に話した。
「そうした世界やっちゅうことや」
「そのこと目で見て再認識したわ」
「それは何よりや。ほな今からどうする」
「そやな、城に行ってその星の連中と会いたいけどな」
 それよりもと言う芥川だった。
「その前にすることがあるわ」
「それは何や」
「腹が減った」
 このことだった、芥川が今一番問題としていることは。
「腹が減っては戦が出来んって言うな」
「それはその通りやな」
「それでや」
「今はか」
「そや。まずはや」
 何といってもというのだ。
「何か食おうか」
「ほな適当な店に入るんや。わしは別の世界に一時戻ってそこで食うて来る」
「自分がおる本来の世界か」
「精霊界とか妖精界とか言われてる世界や」
 そこが狐が本来いる世界だというのだ。
「そこに戻ってきつねうどんでも食うわ」
「狐やから狐うどんか」
「揚げは大好物や」 
 まさに狐であった、それも日本の。
「それでや」
「そうか、ほなな」
「一時お別れやな」
「お互い美味いもん食おうな、ただ銭はな」
「自分の懐に結構な額あるんで」
「あっ、ほんまや」
 懐を探せば財布があった、そしてそこには大判だの小判だのそして円の銭だのがずしりとなるまでにあった。
「あるわ」
「星のモンは大体持ってこっちに来てるわ」
「そやねんな」
「それで飯食うたらええ」
「よし、ほな何か食うてくるな」
「喰い終わったらわしに来いと念じるんや」
「そうしたら自分が来るんやな」
 芥川もその辺りの事情は理解した。 
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