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夢幻水滸伝

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第六十六話 過去その四

「わしは空も飛べるしな」
「そんな力もあるか」
「只の狐やないからな」
 それ故にというのだ。
「九尾の狐やぞ」
「絶大な妖力を持つんやな」
「そや、その力は神仙にも匹敵するんや」 
 それが九尾の狐が持っている力だというのだ。
「その力のうちにはそういうものもある」
「それでやねんな」
「そや、空も飛べるからな」
「空を飛んでか」
「一気に大坂に行くで」
 その街にというのだ。
「ええな」
「よし、ほな乗せてもらうで」
「ただ鐙も鞍も手綱もないけどな」
「それはいらんのやな」
「妖力でそこは制御したるわ」
 狐のそれでというのだ。
「だから安心してや」
「そのうえでやな」
「乗ってくんや」
「そうさせてもらうで」
 芥川も頷いてだ、そのうえで狐の背に乗った。すると狐はすぐに空高く飛び上がって大坂の方、彼等がいる場所から見れば南西に飛んだ。
 すると文字通り瞬きする間にだった、彼等は賑やかかつ巨大でその中央に巨大な城それも見事な黒い壁と金色の瓦の天守閣を持つそれがある街に来た。芥川は狐と共にその街の中に入ってすぐにこう言った。
「間違いないな、ここはや」
「大坂やってわかったか」
「あの城でわかったわ」
 その天守閣を見つつ狐に述べた。
「あれは大坂城、しかもや」
「あの天守閣はか」
「こっちの世界で言うと太閤さんの頃のやつやな」
「よおそんなんわかるな」
「絵で観たんや」
 あの黒と金の天守閣はというのだ。
「大坂の陣の絵でな」
「それはそっちの世界の話やな」
「そや、それでわかったんや」
 秀吉の頃の大坂城の天守閣とだ、この天守閣は初代で言うまでもなく大坂の陣で焼け落ちてしまっている。二代目は江戸時代に落雷で焼けて今は昭和六年に建てられた三代目でありそれぞれ違うものなのだ。
「太閤さんの頃やってな」
「成程な」
「ところで城があるっちゅうことは大名がおるか」
 芥川はすぐにこうも考えた。
「そうなんやな」
「ああ、それな」
 狐も芥川にすぐに答えた。
「実は前にはおったけどな」
「それがか」
「そや、その大名が星の奴等に会ってな」
「僕以外の誰かか」
「そんで大坂ごと譲り渡したんや」
「何や、一戦交えずにか」
「言うたやろ、外の世界から来た奴はこっちの世界では滅茶苦茶強い」
 狐はもう自分から降りて横にいる芥川に話した、安土桃山時代を思わせる賑やかな街並みを共に歩きながら。
「もう法外なまでな」
「術もかなり使えてやな」
「覚えもええし威力も強くてな」
「しかも腕も立つんやな」
「尚且つ絶大な力を持ってる神具も使える」
 これのこともあってというのだ。
「もうそれこそ神様と人位ちゃう」
「そこまでの力の差があるんやな」
「こっちの世界の奴なら皆知っとることや」
「それでか」
「ここの大名もあっさりとや。命と仕事を保障してもらってな」
 そのうえでというのだ。 
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