夢幻水滸伝

「本当にね」
「それは言わんことや、信じられへん負け方は伝統や」
「特に巨人にだね」
「それも否定出来ん」
　阪神の長い歴史の中でというのだ、しかも甲子園でもそうであるから余計に困ったことであると言えるだろうか。
「昭和四十八年とかな」
「最終戦惨敗で目の前で胴上げだね」
「よお知ってるな」
「私達も日本にいて長いからね」
「日本通になってか」
「阪神のことも知ってきているよ」
　こう芥川に言うのだった。
「お陰様でね」
「それでその話も知ってるか」
「よくね」
「知らんでええけどな」
「三十三対四」
　シェリルはぼそりと究極のネタを出してきた。
「有り得ない」
「ああ、ロッテとのシリーズな」
「世界的に見ても恐ろしい展開」
　こうまで言うのだった。
「あれは」
「世界的にかい」
「あの大舞台であの惨敗はないから」
「世界でもないんか」
「多分」
「メジャーでもなかったと思うで」
　メルヴィルはかなり真剣に言った。
「あんな有様は」
「メジャーでもか」
「何処にあんな四連敗があるねん」
　シリーズのおいてのそれはというのだ。
「阪神は全然でロッテはボロ勝ちってな」
「しかも甲子園で胴上げか」
「何処までネタになるねん」
「あれはもう何ていうかな」
　メルヴィルの指摘に芥川も苦い顔で返すばかりだった。
「ドツボやったんや」
「ドツボか」
「もうどうしようもないな」　
　そこまでのものだったというのだ。
「スポーツにはそういう時もあるやろ」
「阪神はそれが多いにも程があるわ」
　トゥエインはこう指摘した。
「毎年一回はあるやろ」
「否定出来んな」
「ソフトバンクとのシリーズでも四連敗やったな」
「一勝した後な」
　二〇一四年、この時もそうだったのだ。
「その後華麗にな」
「秋山監督の胴上げの横で抗議しとったな」
「和田監督がな」
　相手の日本一の胴上げの横でそうなっていたのだ、尚秋山幸二監督は日本一と退任の二つを合わせた胴上げだった。
「そうなったわ」
「あれもないな」
「メジャーでもか」
「他のスポーツでもな」
　トゥエインもこう言うのだった。
「有り得んわ」
「毎年夏になったら調子落とすな」
　このことを指摘したのは施であった。
「甲子園からな」
「最近ましになったと思うけどな」
「それでも夏の疲れ出るな」
「本拠地使へんからな」
　暑い夏にだ、所謂地獄のロードという阪神にだけある過酷な条件だ。
「それでや」
「それが大きいな」
「ああ、春に調子がよおてもな」
　最初から調子が悪いシーズンもある。
「それでもな」
「夏はやな」
「疲れが出るのは確かや」
「それで後半負けが込むんやな」
「そや」
　まさにそれでというのだ。