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夢幻水滸伝

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第六十五話 人間の姿でなくともその二

「和風パスタもええってな」
「そういう風にな」
「フランコも言うてたな」
 イタリア人、つまりスパゲティの本場から来た彼もというのだ。
「納豆スパとか最高とかな」
「そう言うてるな」
「納豆スパってええのん?」
 納豆スパゲティの名前が出てだ、綾乃は首を傾げさせた。
「うち納豆も食べるけど」
「スパゲティのソースにするのはやな」
「せんのやな、綾乃ちゃんは」
「御飯にかけるのは好きやけど」
 それでもというのだ。
「どうも」
「まああれは独特の発想やな」
「日本独自の」
 二人もこう言って否定しなかった。
「納豆とスパゲティとかな」
「この組み合わせは」
「合う様に思えんねん」
 綾乃としてはというのだ。
「納豆とスパゲティって」
「それでやな」
「綾乃ちゃん食べへんねんな」
「大阪におる母方のひいお祖父ちゃん納豆自体全然食べへんし」
 綾乃は自分の曽祖父の話もした。
「あんなん食べもんやないって言うて」
「昔関西で納豆食べんかったからな」
「今は普通にお店にあるけどな」
 スーパーでも一つのコーナーになっている。
「けどな」
「昔はな」
「あんなん食べんでも生きていけるっていうて」
 それでだというのだ。
「絶対食べへんわ」
「そういうお年寄り結構おるな」
「関西やとな」
「これが関西だけやからな」
「ちょっと不思議やな」
 かつて納豆は関西ではそれこそ甘納豆がそれだと思われていた、それであの糸を引く納豆は存在していなかったのだ。
 そのことについてだ、二人も言うのだった。
 しかしだ、ここでだった。
 芥川は目を鋭くさせてだ、そのうえで。
 ふとだ、二人にこんなことを言った。
「そういえばこっちの星の奴でまだな」
「まだ?」
「まだって何や」
「いや、商業科とか農業科の三年の奴多いな」
「そやな」
「そういえばな」
 ここで二人も頷いた。
「まだな」
「おらへんな」
「そや、まあこれからな」
 芥川はさらに言った。
「入るかも知れんけどな」
「それでもやな」
「今はやな」
「ああ、おらへんわ」
 このことを言うのだった。
「これから次第やな、工業科には北原と水産科には吉川がおるけれどな」
「あの二人はこっちにおってな」
「随分頼りになるけどな」
「まあな、商業科とか農業科の連中はこれからやな」
 さらにと言ってだ、芥川はその話す二人と共に農業科に入った、農業科の学園の中でもかなり広い敷地内を通ってだ。
 そうして二年の校舎に入ろうとすると農業科の中にある水田から声がした。
「あれっ、姫巫女さんと」
「うちを姫巫女さんって呼ぶってことは」
 綾乃はすぐにわかった、そう呼ばれて。 
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