夢幻水滸伝
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第六十五話 人間の姿でなくともその三
「星の子?」
「何か御用でしょうか」
一七五位の背で眼鏡をかけた茶色の髪の毛を真ん中で分けている少年だった、ダークグリーンの三つボタンのブレザーとズボンの制服に制服と同じ色のネクタイと緑のブラウスという恰好は陸上自衛隊のそれに酷似している。
体格はしっかりとしているその彼が三人のところに駆けてきて言ってきた。
「こちらに」
「自分は星のモンやな」
中里はこのことを察して少年に応えた。
「そやな」
「はい、そうです」
その通りだとだ、少年は中里の前に来て答えた。
「志賀徹です」
「ああ、自分が志賀か」
「こちらの世界では二年E組です」
この組にいるとだ、志賀は答えた。
「宜しくお願いします」
「そうか、自分E組か」
「はい」
そうだとだ、志賀は中里に答えた。
「農業科の」
「それでどうしたんや」
「どうして田んぼのところにいたかですか」
「農業科やからな」
それでとだ、中里はこの学科の事情を考慮してから述べた。
「日直か何かで田んぼチェックしてたか」
「はい、そうです」
その通りだとだ、志賀は中里に答えた。
「そうしていました」
「実際にそやってんな」
「日直は昼はです」
「田んぼのチェックするんか」
「そうしたことになっていまして」
「成程な」
「はい、それでこちらの世界の僕に会いにですか」
志賀から言ってきた。
「来てくれたんですか」
「そや、しかしな」
「しかしといいますと」
「他の奴にも会いに来たんや」
農業科のというのだ。
「日本の星の奴のな」
「農業科で星の者といいますと」
「一年の田中とや」
芥川が言ってきた。
「美奈代ちゃんと千歳ちゃんは」
「あの三人もですか」
「会いたいけどな」
「三人共メールアドレス知ってますので」
志賀は芥川にも答えた。
「ではすぐに呼びますね」
「そうしてくれるか」
「はい、では」
志賀は芥川の言葉にすぐに頷いてだ、そうしてだった。
懐から自分の携帯を出して連絡をした、するとすぐに三人の男女が来た。
まずは赤い詰襟の超長ランとドカンというもうかなり珍しい恰好で角刈りをした鋭い目の少年が挨拶をしてきた。
「田中秀一、一年E組にいます」
「おい、超長ランか」
中里もそのことに突っ込みを入れた。
「凄い制服やな」
「はい、応援団にいまして」
「それでか」
「制服はです」
「超長ランか」
「応援の時は黒になります」
その色のものを着るというのだ。
「そして普段はです」
「赤の超長ランか」
「如何でしょうか」
「正直驚いたわ」
中里はこう答えた。
「ほんまにな」
「そうでしたか」
「動きにくいやろ」
「いえ、別に」
その丈の長さは気にならないとだ、志賀は答えた。
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