夢幻水滸伝
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第六十四話 頼りになる後輩達その九
「男も怖いですね」
「まあそうなるね」
「残酷な奴は残酷ということですね」
「女の子だけと思うなってことかしらね」
武者小路も微妙な顔になった、綾乃達はそうした話をしてだった。
今度は商業科の一年の校舎に向かおうという話になる筈だが芥川が二人に言った。
「工業科行こな」
「あれっ、商業科の一年の子達は」
「まだ星の連中おらんから」
それでとだ、芥川は綾乃に答えた。
「そやさかいな」
「それでやねんな」
「また今度や」
この世界では商業科の一年にいる星の者がまだいないからだというのだ。
「行こうな」
「わかったわ、ほな次は」
「工業科や」
そちらに行くというのだ。
「そうしような」
「よし、行こうな」100
綾乃が頷き中里も続いた、そしてだった。
一行は実際に工業科に向かった、そこから工業科の三年A組に北原がいた。見れば逞しい丸い顔立ちに角刈りの一九〇はあるがっしりした体格の少年だった。長いフックで止める形の黒い長ランとドカンズボンがよく似合っている。
その北原の方から三人に言ってきた。
「よく来てくれたでごわす」
「ああ、しかし自分こっちの世界でもでかいな」
「元々身体は大きかでごわす」
「そうなんか」
「それであちらの世界でもでごわす」
「大きいんやな」
「そうでごわす」
「成程な、しかしそのでかさは」
一九五はあるので三人共見上げている。
「凄いな」
「よく言われるでごわす」
「そうやろな」
中里も唸って言う。
「僕達もそれなりの高さやけどな」
「一九五になるとな」
芥川は今も見上げている。
「やっぱり凄いわ」
「ほんまな」
「桜島の如きおのこになれ」
二人に応える形でだ、北原はここでこんなことを言った。
「そう言われて育ってきたでごわす」
「身体だけやなくてやね」
綾乃は北原が今言わんとしていることを察して述べた。
「そういうことやね」
「その通りでごわす」
「やっぱりそうやね」
「だからおいどんは身体を鍛えて」
「心もやね」
「そうする様に心掛けているでごわす」
「西郷さんみたいにやろか」
綾乃は鹿児島県、当時は薩摩藩だったこの地が生んだ幕末と明治の偉大な人物の名前をふと出した。
「つまりは」
「そうでごわす、西郷さんはおいどんの尊敬する人でごわす」
「それでやね」
「西郷さんを目指して励んでいるでごわす」
「それはどっちの世界でもやね」
「無論でごわす、どちらの世界でも頼むでごわす」
「こっちこそな」
実際に北原はあちらの世界で政戦双方で非常に頼りになる、特に内政に関しては柱の一人にさえなっている。それで綾乃も心からの笑顔で応えたのだ。
「宜しゅう頼むで」
「こちらこそでごわす」
「ほんま頼りになる人材が入ったな」
「僕もそう思うわ」
中里は芥川の言葉に頷いた。
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