夢幻水滸伝
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第六十四話 頼りになる後輩達その八
「女の子は」
「怖いから言うのよ」
「私達にしてもそやで」
「商業科の女の子に直接言うのはあれだけれど」
「怒らせたら怖いから」
「そうばい、優しいと思ってたばいが」
「自分で思ってるのと他人が思ってるのはちゃうさかいな」
ここでこう言ったのは綾乃だった。
「そやからな」
「そうしたものですか」
「男の子は数が少ないさかい」
商業科や農業科ではというのだ。
「それでそう思うもんやで」
「そうしたものですか」
「そやで、女の子も気をつけんとな」
「怖いとですか」
「間違っても男の子寄ってたかって吊し上げたり大上段で叱りすけたり待ち伏せして帰り道相手の子に聴こえる様に陰口言うたらな」
「うちそういうこと絶対にせんです」
純奈は綾乃が今言った例えはすぐに否定した。
「そんな残酷なこと」
「せえへんかったらええけど」
「したら駄目とですか」
「ほんま怖がられるから」
「そうしたことする娘が商業科におるとですか」
「誰かおってな」
純奈が知らないにしてもというのだ。
「男の子はそういうの見てちゃう?」
「女の子怖がっとるとですか」
「そうやと思うけどな」
「そんなもんですか」
「純奈ちゃんがそんなことせんかったらええで」
綾乃は微笑んで純奈に話した。
「今純奈ちゃん自身が言うた通り残酷やしやられた相手恨むさかい」
「恨まれるのも」
「一生恨んで人格変わる子もおるし」
「おるな、そういう奴」
芥川も綾乃のその話に頷く。
「あんまりにもきつい仕打ち受けて恨みの塊になる奴」
「おるやろ、そういう子」
「おるわ、そういう奴って絶対に忘れんから」
自分が受けたその仕打ちをだ、行った相手は忘れていても受けた方は忘れることが決してないものなのだ。
「やばいで」
「残忍な仕打ち受けて残忍になるし」
「陰湿で卑劣で執念深くなるしな」
「そうした子にしてまうし」
「そんなことはせんことやな」
「絶対に復讐考えてるしな」
「ああ、背中から撃って来るで」
そうした人間はとだ、芥川は言い切った。
「油断させてな」
「そういうことした相手に」
「他にも恨み持つ相手にな」
「そう思うとな」
「僕も思うわ、残酷なことはせんことや」
「ほんまにそやね」
「よおわかりましたばい」
純奈もその話に眉を曇らせて応えた。
「そんなことせんことです」
「そやで、見た方も怖がるし」
「さっき怖いって言った様に」
純奈は武者小路と石川を見つつ綾乃に応えた。
「そうせんことばい」
「そや、ただこれって男の子でもする子おるな」
「残酷なことを」
「うち学校の先生で見たし」
「学校の教師で、ですか」
「そやで、生徒に暴力振るいまくってたんや」
そうした教師がいたというのだ。
「流石に悪事ばれて懲戒免職になったけどな」
「当然の処分ですね」
「それでもおったから」
「男でもそうしたことをする奴がいるとは」
石川も驚くことだった。
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