魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica20-Aインターミドルの猛者~Dahlgrün & Buster head~
†††Sideイリス†††
いやはや、ヴィヴィオ達を連れての買い物も無事に済んで何より。ま、わたしとトリシュとルミナ、それにステルス迷彩魔法で密かに付いて来てもらってるルシルとアイリの護衛なら、どんな仮面持ちが来たとしても確実に返り討ちに出来るから、心配なんて何1つとしてないけどね。
『ていうか、ルシル。あなた、アレだけ喋っちゃダメって言ったのに、なに? シャル化の犠牲者って・・・』
『そのままの意味だよ。セクハラの呪い、だ』
「『セクハラ? わたしが? はっはっは! ぬかしおる!』・・・っと、来たね」
『『はあ・・・』』
わたし達は今、ショッピングセンターのエントランス前で車を待ってる。駐車場まで歩けることは歩けるけど、安全面を考えて店の出入り口から車までの距離を、出来るだけ縮めた方が良いに決まってる。ルシルとアイリが溜息を発したけど、その意味を問い質す前にルーツィエの運転するリムジンが、こちらに向かって来てるのが見えた。
『んじゃ来た時と同じで、2人は助手席ね。もちろん、ヴィヴィオ達が乗った後で♪』
『了解だ』
『ヤー♪』
プップ♪とクラクションを鳴らして停車したリムジン。ルミナがドアを開けて、「はーい、どうぞ~!」ってヴィヴィオ達を招き入れる。子供たちが乗車する間、わたしとトリシュとノーヴェ、ルシルとアイリで周囲を最大警戒。子供たちの次はノーヴェ、トリシュ、ルミナ、最後にわたしが乗った後・・・
『シャル。ルシリオンとアイリ、乗車完了だ』
ルシルからの報告が入る。わたし達の居る後部と、ルシルとアイリとルーツィエが居る運転席と助手席を隔てる壁がある上ルシル達の姿はわたしにも見えないから、ちゃんと乗ったよ、っていう知らせが要るの。ルーツィエも、護衛としてルシルとアイリがこっそり付いて来てるのは知ってるから、今頃なにかお喋りしてるかも。
「全員乗車完了を確認。ルーツィエ、出して」
『かしこまりました。それでは出発します』
車内にそうアナウンスが入ってすぐ、車は静か~に動き出した。向かうのはインターミドルを始めとした、数多くの魔法戦競技会の試合に使用される会場と同じ造りをしたドーム、ツヴァイトクッペル。派手な魔法を使っても問題ないように設計されてるから、競技会への出場を決めた者、志してる者が本番前に練習するための施設となってる。・・・っていうホームページで覚えた説明を、ヴィヴィオ達にもした。
「試合を行うリングのサイズとかも公式規定どおりの広さで設計されてるから、相手との間合いの感じを掴む練習にもなるの」
「それは重要ですね。インターミドルにはリングアウトによる強制敗北はないですけど、間合いは格闘型にとってとても大事なので」
本番さながらのリングでの練習を行えるということで、アインハルトやヴィヴィオ達もちょっと興奮気味。車で移動すること数分、大きなドーム状の建物が見えてきた。ルーツィエにはまた、さっきと同じように建物の出入り口付近で停めてもらって、車から出入り口までの移動距離を少なくしてもらう。わたしとステルス状態のルシルとアイリが先に降りて周囲を警戒。
「いってらっしゃいませ~!」
ルーツィエからの見送りの言葉にヴィヴィオ達は「ありがとうございます、いってきます!」って満面の笑顔で応えた。駆け足気味でドームに入って、エントランスホールの受付で使用料(子供でも払えるお手軽料金だ)を払った後、更衣室を目指す。
『ルシルは外で待機ね♪ 姿が見えないからって乙女の着替えを覗いちゃダメだよ?』
『言われなくても覗かん』
『アイリも外で待ってるね~♪』
そんなルシルの呆れ声やアイリの陽気な声を背に、わたしもロッカールームへと入る。ヴィヴィオ達はついさっき買ったばかりのジャージへと着替えてる。まぁチームナカジマ共通の服は、刺繍を入れないといけないってことでお店に預けたままだから、みんなそれぞれ好きに決めて購入したデザインの物だけど。
「シャルさん達は・・・着替えないの?」
「わたし達は一応護衛だしね~」
ヴィヴィオにそう答えたら、「そうですか・・・」ってアインハルトが目に見えて落ち込んだのが判った。ルミナが「どうしたの?」って聞くと、アインハルトは「あ、いえ・・・」って言いよどんだ。
「あの、アインハルトさんがチームナカジマに入った理由の1つに、次の合宿からやることになってる高ランク魔導師との模擬戦への参加っていうのがあって・・・」
「そう言えばそうだった。ノーヴェの提案だったね」
「あ、はい。短期間で絶大な経験値を積むには、格上との試合だと考えたので・・・。勝つばかりだけじゃなく、負けること多くを学べると・・・」
ノーヴェのそんな意見に「確かに。負けることで自分に何が足りないか判るから」ってトリシュも同意する。わたしやルミナも首肯することで、ノーヴェの考えに同意してることを示す。負けて這い上がって成長するかどうかは、それは人それぞれだけど・・・。でも折れない限り、上を目指そうって気概がある限りは成長して、さらなる高みへと行けるはず。何せ、わたし達がそうなんだしさ。
「じゃあ・・・わたしとトリシュとルミナ、この中で誰と闘り合いたい?」
さすがに護衛3人が一気に模擬戦に入るわけにはいかない。だからヴィヴィオ達と向かい合って仁王立ちで微笑んで見せると、あの子たちはバッと構えを取った。わたし達の戦意を受けての反射行動。うん、悪くない反応スピードだね。
「いいんですか、シャルさん?」
「1人だけならね。『一応、ルシルとアイリが警戒してくれてるし、問題ないっしょ♪』」
『え? ルシルさんとアイリも一緒なんすか!?』
『うん。ステルス魔法で、ずっと付いて来てくれてるよ』
思念通話に切り替えてそう伝えると、ノーヴェは今まさに袖を通そうとしていたジャージで、ブラジャーに隠れた胸を覆い隠した。顔も赤くなってるし、ルシルが更衣室にまで付いて来てる、なんて考えちゃったのかも。
『大丈夫。ルシルは外に居るから。さっきのショッピングセンターでも、着替えが必要だった店じゃ外で待機してる・・・と思う』
『あー、いや、大丈夫です、ルシルさんの人となり・・・真面目っぷりは知ってるんで・・・。信じますし、信じられます』
そう言って照れ笑いしたノーヴェは、安心したように着替えを続けた。んで、ヴィヴィオ達は、わたし達の誰かと闘いたいのか、っていう相談を終えて、わたし達へと視線を戻した。あの子たちの視線の先に立つのは「ルミナ・・・」だった。
「はいっ! ルミナさん、よろしくお願いします!」
「「「お願いします!」」」
ヴィヴィオ達が整列してお辞儀をした。それに対してルミナは「いいよ。じゃあ、やろうか」ってニヤリと笑みを浮かべた。脂汗を垂らしながらもヴィヴィオ達も笑みを浮かべた。着替えを終えて試合を行う会場となる大ホールへと向かう。
「おお! なんかすごいビリビリする・・・!」
「うん・・・! ドキドキしてくる!」
リオとコロナが、廊下の先にある大ホールから迸って来る魔力波を感じても、それを楽しみとして受け取ってることにわたしは、いい選手になれる、って微笑む。観ればヴィヴィオとアインハルトも笑顔だ。そんな彼女たちを見守りながら廊下を進み、会場へと到着する。大ホールには6つのリングがあって、内4つのリングは今まさに白熱の魔法戦が行われてる最中。ヴィヴィオ達が「わあ・・・!」って目を爛々と輝かせてる。
「空いてるリングがあるでしょ? あそこを1時間借りたから、時間いっぱいまでルミナにしごいてもらいな~♪ んじゃルミナ、そういうことで、よろしくっ☆」
「ルミナさん。すいませんが、魔力出力をAAランクほどまで抑えてもらっていいっすか?」
「AAランク?・・・あー、そっか。そりゃそうだよね、SSランクなんて、さすがに無茶が過ぎるか~」
わたしですら全力のルミナを相手にしたくないって考えてるのに、ひよっこなヴィヴィオ達にとっちゃ正しく天災と変わらない。それほどまでの実力差がある。ルミナは腕輪型デバイス「ツァラトゥストラ!」を起動。ノーヴェに言われたとおり魔力を抑えるように魔力封印を行った。
「ねえ、あの人たちって・・・!」
「ああ! 間違いない、騎士イリス、騎士トリシュタン、騎士アルテルミナスだ・・・!」
「本物・・・!?」
「うわうわ、どうしよう! サイン欲しい!」
「うそ・・・! 騎士アルテルミナスがリングに上がった・・・!」
会場に入って、わたし達が予約したリングへ近付くと、他のリングで試合形式で模擬戦してた子供や、リングの周囲に居たコーチや友人、ご家族であろう人たちが口々にそう言って、わたし達の動向を注視してくる。
(いや~、有名人は辛いな~♪)
「じゃあ誰からやる?」
「ジャンケンで決めましょう」
ルミナとの試合を望んでいたアインハルトがジャンケンで試合順を決めようと提案した。当然、「良いんですか?」ってヴィヴィオが確認した。
「ヴィヴィオさんもリオさんも、ルミナさんとの試合が楽しみでしょうし。公平に公正に、です」
「あ、私も参加して良い? 最強の拳闘騎士との試合なんて、たぶん今日くらいじゃないと出来ないだろうし♪」
そういうわけで、ルミナと試合をしたいヴィヴィオ、リオ、アインハルト、リヴィアの4人でジャンケンすることになった。
・―・―・―・―・
ツヴァイトクッペルの前を走る幹線道路。中央区アヴァロン、北区カムラン、南区ウィンザインを縦断していることで交通量は多い。そんな幹線道路を走行する数ある車の中に紛れ、高級車が走行中だ。運転しているのは青年で、服装から執事かと思われる。後部座席には1人の少女。
彼女の名前は、ヴィクトーリア・ダールグリュン。古代ベルカ史に登場する名立たる騎士・王の1人、雷帝バルトローメウス・ダールグリュンの末裔なのだが、直系ではないため血は薄い。しかしそれでも雷帝の技を習得しており、その実力は本物だ。
「あら?」
ヴィクトーリアが何気なく外を眺めていると、見覚えのある少女をその視界に収めた。長い髪をポニーテルにした娘で、活発そうな顔をしている。
「ポンコツ不良娘とその取り巻き。何をそんなに慌てて・・・?」
彼女の乗る車の進行方向と同じ方角へと全力で駆けているポンコツ不良娘ことハリー・トライベッカに、ヴィクトーリアは少し興味がわいた。ヴィクトーリアとハリーは共にインターミドルチャンピオンシップに出場する選手で、都市本戦にまで進めるだけの実力を有している。
「エドガー。ちょっと歩道に寄せてもらえる?」
「かしこまりました」
執事エドガー・ラグレイトはウィンカーを点灯させて歩道側へと車を移動させ、ハザードランプを点灯した上で速度もゆっくりにした。ヴィクトーリアは窓を開けて、「ごきげんよう、ポンコツ不良娘」とハリーに声を掛けた。
「ああん!? 誰かと思えばヘンテコお嬢様じゃねぇか! 今日も優雅気ままにドライブってか? インターミドルのトップ選手ってんなら走れ走れ!」
「わたくしはもう、今日の分のトレーニングは終えましたわ。トレーニングのやり過ぎはいけませんのよ? これだから脳筋は・・・。必要以上に筋肉を付けて達磨になってしまいなさい」
「あ゛あ゛?」
「なんです?」
ヴィクトーリアとハリーの視線の間で火花が散る中、ハリーの妹分の1人、もっとも小柄でサングラスを掛けた少女・ルカが「リーダー! 今年の大会で負けて悔しいのは判るっすけど・・・!」と、ハリーにとっては思い出したくもない悔しい現実を突きつけてしまった。今年のインターミドルにて、ハリーはヴィクトーリアと都市本戦で激突した。結果ハリーは敗れ、都市本戦5位入賞となった。
「あ、バカ! この急いでる中で、なんでその話を出した!?」
ルカの失言に本気で怒鳴るのはミアという名の、妹分の中で最も背が高く、髪の長い少女。さらにもう1人の妹分、風邪用マスクを着けた小柄な少女・リンダが「リ、リーダー!? 気にすることないっすよ!」と 俯き加減になり走る速度も落ちてしまったハリーにフォローを入れる。
「ぅ・・・ぐす・・・」
俯いていて見えないがハリーから鼻を啜る音が聞こえてきたため、「うわぁ、すいません! マジすいません、リーダー!」と謝るルカに、ハリーは「な、泣いてねぇよ・・・!」と強がるが、袖で涙を拭っている。
「なにあなた、本当に泣いているの?」
「泣いてねぇよ! ちくしょう、来年は必ずテメェを負かすからな!」
若干涙ぐんでいるハリーは、ヴィクトーリアにリベンジすることを告げながらビシッと指を差したのだが、ヴィクトーリアは車の中ということもあって、ハリーの人差し指は何も無いところを差していた。
「おい、どこ行くんだよ!」
「本当にポンコツですわね! わたくしは車なのですから、あなたが足を止めればこうなるのは必然ですわ!」
「あーあー悪かったな、ポンコツで! でも来年は、そんなポンコツに負かされるってこと、今のうちに覚悟しとけよな!」
赤信号で停車した車に追いつき、改めてヴィクトーリアにリベンジを誓ったハリーだったが、「まぁそんな事より」とヴィクトーリアは、彼女の宣言をさらりと流した。ハリーは「なんなら今からやっか!? おっ?」とガンを飛ばすが・・・
「あなた達は何をそんなに急いで走っていたのかしら?」
わざわざエドガーに車を歩道側へと寄せ、走るハリー達に合わせて速度まで落とさせた本題を、ヴィクトーリアはようやく伝えた。するとハリーの妹分たちも「そうっすよ、急がないと!」と、その場で足踏みをしつつ、道路の先を指差した。
「あー! そうだった! こんなところでヘンテコお嬢様相手に喧嘩売ってる場合じゃねぇんだ! あばよ!」
「ちょっ、わたくしの質問に答えなさいな!」
「ああもう! この先にあるツヴァイトクッペルって知ってか?」
「ええ、もちろんですわ」
ハリーからの問いに、それが何か?と首を傾げているヴィクトーリア。携帯端末を取り出していろいろと操作していたミアが「今ですね、そこに・・・」と、ヴィクトーリアにある写真を見せた。
「っ! 騎士アルテルミナス! それにこちらはトリシュタンさんにイリスさん・・・! いえ、それより気になるのは、騎士アルテルミナスが、誰とも知れない少女と試合を・・・?」
「だろ? 元とはいえ拳闘騎士の頂点だった人が、一般人を相手に試合をしてるってんだぜ? こりゃ行かないわけにはいかねぇだろ!」
「なるほど。・・・エドガー」
「はい、お嬢様」
ヴィクトーリアはエドガーに車を停車させるよう言外に伝え、車は静かに停車した。助手席と後部座席のドアが自動で開き、「あなた達、早くお乗りなさい」と誘った。
「あなた達の足の速さは見て判ってますけど、それでも10分は掛かりますわ。それではイリスさん達も帰ってしまうかもしれません。ほら、早くお乗りなさいな」
「・・・ありがと」
「お礼をしたいのなら相手の目を見てしなさい、不良娘」
「うぐ・・・!」
「リーダー。今回ばかりは・・・」
「ちゃんとお礼をした方が良いと思うっス」
「あたしもそう思うっス」
妹分たちにまでそう言われてしまうと、ハリーもさすがに「どうもありがとうございました!」と顔を赤くしながらも礼を述べた。そしてエドガーの運転する車はそう時間も掛からずツヴァイトクッペルへと到着した。ヴィクトーリアはエドガーに出入り口前で自分たちを降ろすように伝え、出入り口前のロータリーで停車すると同時・・・
「執事さん、ありがとうでした!」
「「「ありがとうでしたっス!」」」
「はい、どういたしまして」
ハリーと妹分3人が一斉に車からロケットのように飛び出し、ヴィクトーリアも「エドガー、わたくしも先に行っていますわ!」と、ハリーらを追って飛び出していった。そして遅れてツヴァイトクッペルの受付カウンターにたどり着いたのだが、ハリー達は奥へ行こうとせず立ち往生していた。
「どうしたんですの? 早く行かなければ・・・」
「ヘンテ――いや、ヴィクトーリア!」
「な、何ですの急に・・・!? そんな改まって・・・」
ハリーがヴィクトーリアに気付くや否や90度に腰を曲げて、ヴィクトーリアに頭を下げた。ハリーが頭を下げ、自分の名前をはっきり呼ぶことなどこれまでなかった、と考えるヴィクトーリアはたじろいだ。
「金、貸してくれ!」
「はい?」
「使用料! 使用料がないと入れないんだよ!」
「はあ? あなた達、まさか無一文でここまで来たんですの!?」
「いや、ここへ来る予定は最初は無かったんだよ。少し離れたところにあるショッピングセンターで買い物して、さぁ後は帰るだけ~ってところたったんだけどな。残るは帰りのレールウェイ賃だけ。だからここを利用するだけの金が無いだけだ!」
「何を威張ってますの!?」
文字通り頭を抱えるヴィクトーリア。ハリーや妹分たちが「どうか!」と頭を下げ直すその光景を、他の利用者がジロ~っと眺めている。ヴィクトーリアやハリーは有名な選手であるため、周囲からのハッキリとは聞こえないがヒソヒソ話が彼女の耳に届き、このままでは自らの沽券に関わるかも知れないと判断した彼女は「判りましたわ! 早く頭をお上げなさい!」と、ここの利用料人数分を払うことを決めた。
「おう、サンキューな!」
「「「あ、ありがとうございます!」」」
そう言ってハリー達は奥へと駆け出し、ヴィクトーリアはお小遣いを使って利用料を支払った。遅れて彼女も奥へと進み、大ホールへとやって来た。足を止めていたハリー達と合流し、「居ましたわ!」と、チームナカジマとイリス達が利用しているリングを指差した。そして少女たちの中に見知っている顔が3人いたことに気付いたヴィクトーリアは小さく「あぁ、そういうことでしたの」とひとり納得した様子だ。
「うおー! マジだ、マジで居る!」
「ちょっ、お待ちなさい! あのお三方は、ここザンクト・オルフェンのV.I.P.ですのよ!? 失礼があっては・・・!」
「あー、たぶん大丈夫だろ? イリスさんとは顔見知りだし!」
「はい!? なんであなたのような方が、イリスさんと既知なのですか!?」
「んなもん、後で教えてやんよ! 今はただ、確かめたい・・・! 勝てるなんて思い上がりはしねぇ。お前にさえも負けちまうくらいだからな。それでも・・・最強の拳闘騎士とやり合ってみてぇ。たぶん、こんなチャンスは二度とねぇと思うからな・・・!」
負けてもいいから最強に挑戦したいと語るハリーに、ヴィクトーリアも「なんとなく理解できますわ」と微笑んだ。そう、彼女たちは世界最強を目指すアスリートなのだ。目の前に本物の最強が居る以上、挑戦したみたくなるのは必然だった。
「わたくしも挑んでみたいですわね。フォアストパラディン・・・、騎士アルテルミナスに!」
闘志を漲らせたヴィクトーリアとハリーは互いにフッと笑みを浮かべ、最強の待つリングへと駆け出した。
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