八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百六十五話 夏と秋その一
第百六十五話 夏と秋
二学期がはじまった、色々あった始業式の日から数日経ったけれど何かまだ暑くて気分的には夏のままだった。
「何かまだ暑いね」
「ええ、私は特にね」
詩織さんは学校から帰って居間で少し腰かけた僕にこう言ってきた。実は帰り道の途中で一緒になって二人で帰ったのだ。
「そう感じるわ」
「秋田と比べるとだよね」
「神戸もね」
大阪より涼しいといってもだ。
「まだ暑いわ」
「そう感じるんだね」
「ええ、それとね」
「それと?」
「夏休みはじまるの遅かったかったわね、こっち」
「ああ、それね」
詩織さんが何が言いたいのかはすぐにわかった、それでそのことも言った。
「東北はそうだったよね」
「夏休みはじまるの早いのよ」
「他の地域よりも」
「東北とかはね」
「そうだったね」
「夏涼しいから」
「それで夏が終わるのが早くて」
大体八月二十日辺りにはじまると聞いている。
「その分冬は寒いから冬休みが長くて」
「そうなるのよ」
「そうだったね」
「そう、だからはじまるのが遅くて夏が終わるのもね」
「遅く感じるんだね」
「気分的にね、どうもね」
僕に微妙な顔で言ってきた。
「まだ夏なのって感じよ」
「今は」
「そうなの、早く夏が終わって」
「秋にだね」
「なって欲しいわ、私秋好きだし」
「秋はいいよね」
この暑さを思うと余計にそう思えた。
「涼しくて過ごしやすくて美味しい食べものも一杯あって」
「それでなのよ」
「詩織さんも秋が好きなんだ」
「美味しい果物も一杯あるでしょ」
「柿も葡萄もあってね」
「栗もあるでしょ」
「そうだね、梨もあるしね」
どの果物も大好きだ。
「秋は本当にいいよね」
「茸も多いし」
「そうそう、特に秋だと松茸だね」
「松茸ね」
これまで明るい感じだった詩織さんが微妙な感じになった、そのうえで僕にこう言葉を返してきた。
「私松茸はね」
「あまり好きじゃないんだ」
「安い時にお母さんが年に一回は買ってきて松茸御飯作ってくれたけれど」
「美味しかったんじゃ」
「私他の茸が好きだし」
僕にさらに言ってきた。
「あの香りもね」
「好きじゃないんだ」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「私松茸はね」
「あまり好きじゃないんだ」
「あれば食べるけれど」
「なかったらなんだ」
「別にいいわ」
「そうしたものなんだ」
「茸類は結構好きだけれど」
松茸はというのだ。
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