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夢幻水滸伝

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第六十三話 現実世界に戻りその六

「本当にな」
「そや、それであっちの世界でもな」
「警察の責任者としてだよな」
「存分に辣腕を振るってもらってるけどな」
「人情もあるな」
「清濁併せ飲むってタイプやないけど」
 かなり清潔な人物だ、いい意味で。
「まあ融通も利くしな」
「度量もあるな」
「そやからええねん」
「警察の責任者としてな」
「思う存分働いてもらってる、それでな」
「日本の治安はよくなってるな」
「将来はです」
 ここであちらの世界では宰相と務めている太宰が言ってきた、起きている世界では生徒会長であちらではその役職にあるのだ。
「彼女には太平洋の警察の総責任者になってもらいます」
「そして太平洋全体の治安をやってもらうか」
「陸の警察だけでなくです」
「海や川の方もやな」
「はい、そちらの警察もです」
 陸の警察だけでなくだ。
「どれもです」
「統括してもらうか」
「そいして太平洋全体の治安の向上に努めてもらいます」
「責任重大やな」
「はい、ですかあちらの世界では生粋の警察官なので」
 喜久子、彼女はというのだ。
「ですから」
「大丈夫やな」
「必ず果たしてくれます、内政は治安も重要です」
「それがきっちりしてないとな」
「商業も農業も幾らよくなっても」
「万全の結果は出せんな」
「ですから頑張ってもらいます」
「そやな、ほなその喜久子ちゃんとあとは日毬ちゃんにな」
「今からやな」
「会いに行こうな」
 芥川にも話してだ、そしてだった。
 一行は今度はG組に入った、そのクラスにはきりっとした濃紺のブレザーにネクタイ、白いブラウスと短い丈のグレーの地に黒や赤のタートンチェックが入ったスカートに黒い靴下を履いている少女がいた。
 黒髪をロングにしていてその顔立ちは目こそ赤くはなく黒目だがその顔立ちは明らかに彼女であった。
 その彼女がだ、自ら名乗った。
「松尾日毬だ、この世界でも頼む」
「ああ、仲間としてな」
「その様にな」
「宜しくお願いします」
 何処からか声がしてきた、もう一人の声が。
「海音寺喜久子です」
「?声は聞こえるけどな」 
 中里はその小さな女の子の様な声に周囲を見回した、だが。
 周りを見回しても声の主と思われる者は見えないので怪訝に思った。
 だがその彼にだ、日毬が言った。
「自分のすぐ傍を見るのだ」
「傍?」
「そうだ、傍だ」
「ひょっとして」
「はい、私はここです」
 その少女の声がしてだ、そこにいたのは。
 黒髪をおかっぱにして眼鏡をかけた少女がいた、着ている服はスカーフがえんじ色の典型的なセーラー服とスカートだ。スカートの丈は膝を覆っているもので靴下は白だ。顔立ちは可愛らしく白い肌で鼻は適度な高さで眼鏡の奥の瞳は黒目がちで大きい。だが。
 問題はその背だった、美鈴よりも十センチは低く長身の中里では顔の高さで見回すと見えなかったのだ。
 それでだ、中里は思わず言ったのだった。
「すまん、見えんかった」
「私が小さいからですね」
「自分で言うんかいな」
「わかっていますから、そして」
「そして?」
「気にしても仕方がないです」
 このことも自分で言ったのだった。 
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