夢幻水滸伝
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第六十三話 現実世界に戻りその五
その美鈴についてだ、坂口が言った。
「こいつも紹介しないと、ってなると思ってだがや」
「連れて来てくれたんやな」
「そうだがや」
坂口は中里に明るく笑って答えた。
「わし等の気遣いだがや」
「気遣いではなく当然のことです」
太宰は笑って言う坂口に真面目な顔で突っ込みを入れた。
「こうしたことは」
「そうだがや?」
「はい、仲間なのですから」
それならばというのだ。
「それもです」
「当然だがや」
「はい、それでなのですが」
「ああ、美鈴ちゃんにやな」
「こちらの世界で宜しくとです」
太宰は中里達に話した。
「挨拶に来られましたね」
「そや、美鈴ちゃんにもな」
「では好都合でしたね」
「ほんまにな」
「何なら私から会いに来たと」
美鈴は博多弁で中里に言ってきた。
「別に挨拶に出向いてくれんでも」
「そやけどな」
「挨拶たい」
「そうや、こっちの世界でも宜しくな」
「こっちこそ宜しくと」
美鈴はあちらの世界よりも博多弁を出していた。
「私はこっちの世界ではこの外見たい、覚えてきんしゃい」
「こっちもな」
「それでよ、おはん達新たに仲間にした子達に挨拶回りしてるたいか」
「その通りや」
「そうたい、ほな回ってきんしゃい」
「そうするな、しかし美鈴ちゃん博多弁丸出しだな」
「こっちの世界ではそうとよ、というかこれが私の地たい」
美鈴は中里の言葉に笑って返した。
「あと小さくても気にせんことよ」
「小柄なんは別にええやろ」
「小さい小さいと昔から言われてるたい」
「そうなんか」
「スーパーモデルになりたかったとよ」
このことは口を尖らせて言う美鈴だった。
「それでそう言ったら喜久子ちゃんに背のことは気にするなと怒られたことがあるとよ」
「あの娘と付き合いあるんか」
「一年の時同じクラスやったとよ」
美鈴はこのことも話した。
「それでその喜久子ちゃんにもたいな」
「ああ、会いに行くわ」
「わかったとよ、ただあの娘は生徒会長以上に真面目たい」
その太宰を見て中里に話した。
「日毬ちゃんにしても」
「ああ、それはな」
芥川も言うのだった、喜久子のその生真面目さについては。
「ミス風紀委員やからな」
「風紀委員のサンプルたい」
「真面目で堅苦しくてな」
「それでうちも注意されたとよ」
「美鈴ちゃん真面目やろ」
「いや、ちょっと校則に触れたらな」
そうなった時にというのだ。
「駄目って注意されたとよ。ただ人情はあるばってん」
「杓子定規かっていうとな」
「そうではなかとよ」
喜久子はそうした人間だ、確かに真面目で規律には煩いが融通が利かない訳でも人情がない訳でもないのだ。
「だから嫌われてはいないとよ」
「悪人やないからな」
「むしろ善人たい、視野も広かとよ」
「そやねんな」
「ああ、あの娘はいい娘だよ」
幸田も喜久子についてこう言った。
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