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結城友奈は勇者である ー勇者部の章ー

作者:あさりん
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花々と柳の邂逅
  勇者部、一日剣道部になる

 
前書き
私はかつて、勇者になるために死に物狂いで特訓していた。
先代勇者、三ノ輪銀の端末を引き継ぐために。
バージョンアップされた端末の武器は二刀流。
だから私は、一心不乱に鍛え抜いて身につけた二刀流において絶対の自信がある。誰にも負けはしない。だって私は完成形勇者だから。
でも、もし私を上回るやつがいるとしたら…そいつは二人いる。
一人は、私の三好流剣術をマスターした友奈。あとは…あいつしかいないわね。

勇者部御記 新世紀三〇一年
三好夏凜記 

 
「皆さん、今日の依頼は剣道部の助っ人です」
風がやっては意味が無いという勇者部みんなの意見で、いるいないに関わらず、部長らしいことは樹がやることになった。
勇者部の活動は今まで通り、依頼が来たらそれに応え、勇んで手を貸すことだ。
昔は甘いと思ってたけど、もう私にとって、これは当たり前の大切な日常。
「きた!私の出番ね!というか、私一人で充分」
思わずここぞとばかりに机をバンと叩いて立ち上がり、前のめりになって、片手を机に置いたまま拳を握らせた。
剣道部の依頼は定期的にくるのだけど、その度に練習相手として、剣道部のやつらをボコボコにする…私の運動にもなるし、最高の依頼だわ。
「まあまあ落ち着いて夏凛、今回はちょっと事情が違うのよ」
「うん、実は明日、近くの中学と練習試合があるそうなんですけど、もともと部員の少なかったのもあって、讃州中学の剣道部、みんな病気や怪我で出られないそうです」
「ええー!ぜ、全員!」
友奈は目を丸くした。
相変わらずわかりやすいわ…まあ、それが友奈のいいところでもあるんだけど。
「それじゃあ私たちみんなで、剣道部の代わりに試合に出る…てことかな〜?」
園子がすかさず補足した。
「はい、そういうことです」
「じゃあ私たち、一日剣道部だね!」
友奈は燃えてきたー!と両腕を握らせた。
「相変わらず飲み込みが早いわねそのっち…」
「いや〜、剣道着姿のわっしーやみんなが見られると思うと、創作意欲が湧いてくるよ〜」
「!!!友奈ちゃんの剣道着姿…!!!ふふ…私に流れる武士の血が、悠久の時を越えて眼前の剣士の血肉を切り裂かんと燃えているわ…!我が家に伝わる軍刀、銃剣、そして呪いの名刀、婆娑羅一閃(ばさらいっせん)火残の国防刀(ひざんのこくぼうとう)の力をご覧頂きましょう…!」
「東郷さん…?剣道は竹刀を使うんだよ…?」
友奈は固まった。
どうやら園子は既にやる気満々のようだ。目を輝かせ、期待に胸を膨らませている。
園子は、私たちの動向を小説のネタにしようと思った時にこうなる。
もし私が登場する小説なんて書いてたら…考えるだけで恐ろしい。まあもう手遅れかもしれないけど…。
東郷は、まあいつも通りかな。
「あら?でも剣道の団体戦って確か、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将…五人で行うもののはずです。誰か試合に出られないですね」
東郷が我に返って言う。
「え、それじゃあ…」
友奈があたりを見回した。
「この中で出ないとしたら、誰だろう…?」
園子が、ふわふわと呟いた。
「わ、私は出るからね!もちろん!大将で!」
私が出ないなんて考えられないわ。ここの剣道部の為にも、絶対勝ってやらないと!
「そうね、夏凛はそれでいいと思うわ。じゃあ、引退したアタシが、観客席からチアで応援してあげるわ!」
「お姉ちゃん…剣道の試合でチアはやめて…」
樹が呆れてそう言った。
もし私の試合中に、風がチアで応援なんてしてきたら!―――


「頑張れー!夏凛ちゃん!」
「ファイトだよー!にぼっしー!」
「夏凛さん、がんばってー!」
「いい調子よ!夏凛ちゃん!」
「フレー!フレー!かーりーん!」
風が勇者部のみんなと一緒に私を応援しながら、チア部のみんなと数々の連携技を決めていく。やがて、その中の二人の重なった腕から、人間とは思えないほど高すぎるジャンプを決め、すたっと着地して、
「いえーい!」
静まり返る体育館。やがて歓声が沸き起こり、試合そっちのけで拍手をしだす相手チーム。
勇者部のみんなも、風に釘付けだ。
「ちょっとー!私の試合、まだ終わってないんだけどー!」


こうなることは想像に難くない。
「でも、本当にいいんですか、風先輩」
友奈が風に遠慮がちに言う。
風はそれを手をぱっぱと振りながら、こう言った。
「いーのよ、きっとアタシの女子力で、剣道部のやつら集中できなくなっちゃうだろうしー!OBは大人しく応援してるわ!」
風はそう言ってばっちりウインクした。
フン…なによ、引退者面しちゃって…
「にぼっしー、ちょっと残念そうだね」
「なっ…別に、風と一緒に試合出たかったとか、全然そんなんじゃないし…」
「だそうですよ、風先輩」
東郷がそう言って、
「まーまー夏凛、これが最後ってわけじゃないし、次はアタシも出るからさ」
「だーかーらー!そんなんじゃないっつーの!」
こいつらはいっつもこうやって私をからかう。確かに、私が素直に言えないからだけど…
「今日はツン、デレデレデレデレって感じだねーにぼっしー!うんうん、また新しいネタを思いついたよ〜」
「デレが多いデレが!…まあいいわ、それじゃあスタメンは、友奈、東郷、樹、園子、それから私ね」
「「「はーい!」」」
「お役目を果たします!」
東郷はいつにも増して表情が凛としている。黙っていれば綺麗なのよね…こいつ。
「やる気だねーわっしー!」
「私も、夏凛ちゃんに習った二刀流で頑張るよ!」
そう、私は友奈に三好流二刀流剣術を教えたことがある。つまり、友奈は私の弟子!世界で二番目に強い剣士だと思っている。
「わ、わたし大丈夫かな…」
樹は不安そうだ。剣道の経験は恐らくないだろうし、まあ当然ね。
「だーいじょうぶよ樹!自慢のアタシの妹なんだから!」
「お姉ちゃん…うん!私、頑張る!」
この姉妹は、こうやっていつもお互いを励ましあっている。きっと、こうやって支えあってきたのね。
「それじゃあ、順番は…先鋒!東郷美森!」
「「「!?」」」
「わ、わたし…?」


果たして、東郷美森の実力は…?
勇者部の、剣道部の、讃州中学の勝利の行方は…? 
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