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夢幻水滸伝

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第六十一話 読んでいた夜襲その十

「やっぱり一人で切り込むならな」
「松尾先輩ね」
 武者小路が幸田に応えた、他の面々は今も綾乃と大蛇の攻撃と障壁の前に中々前に進めないでいる。
「あの人ね」
「ああ、やっぱり東国で一番の武はな」
「あの人よね」
「あの剣術の前にはな」
 まさにというのだ。
「どんな護りがあってもな」
「切って倒して」
「前に進んでくれる、だからな」
 それ故にというのだ。
「ここはもうな」
「松尾先輩にお任せするのね」
「ああ」
 そうするというのだ。
「勿論おいら達も前に進むがな」
「そうね、それじゃあ」
「日毬ちゃんに続くぞ」
「わかったわ」
 武者小路は幸田の言葉に頷いてだ、そしてだった。
 攻めるのをさらに強めた、東国の九人は日毬を先頭として綾乃の懐に入らんとする。そしてその戦先頭の日毬は。
 遂に綾乃がいる大蛇の背に降り立った、そうして自分の前にいる綾乃を見据えてそのうえで言った。
「ではこれよりだ」
「うちをやね」
「倒させてもらう」
 三体となった中の真ん中の日毬が言った。
「いいな」
「そうやね、ここは」
「貴殿は接近戦は苦手だな」
「見ての通りや」
 手には武器はない、それも一歳だ。
「そうしたものはないわ」
「そうだな、しかしだ」
「うちと闘うんやね」
「術を使ってもらいたい」
 こう綾乃に言うのだった。
「そしてそのうえでだ」
「うちとやね」
「闘わせてもらう、降るならいいが」
「生憎その考えはないで」
 綾乃は微笑んでいるが確かな声で答えた。
「うちには」
「そうだな、それではだ」
「うちは術でやね」
「闘ってもらいたい、いいだろうか」
「わかったわ、ほなな」
「今からだ」
「いやいや、姫巫女さんは格闘は出来ないからね」
 ここで新たな声がした、するとだった。
 玲子が来ていた、玲子は自慢の朱槍を手に悠然とした仕草で日毬のところに来てそうして言うのだった。
「あたしが代わりに闘うよ」
「貴殿がか」
「ああ、この円地玲子ちゃんがね」
「ふむ、ならばだ」
 日毬はその玲子を見て彼女に言った。
「貴殿とな」
「まずはだね」
「闘わせてもらう」
「そういうことでね、じゃあ姫巫女さん」
 玲子は綾乃にも顔を向けて言った。
「ここはね」
「ええん、玲子ちゃんが闘って」
「あたしは酒と遊びとね」
「戦とやね」
「喧嘩が大好きなんだよ」
 笑って言うのだった。 
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