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夢幻水滸伝

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第六十話 兵達の慢心その七

「そうだろ」
「全くだ、あの様な方と出会えたら」
 日毬も言う。
「私も惚れてしまう」
「あれっ、日毬ちゃん好きな男の人のタイプは」
「武士の様な人、それにだ」
「高倉健さんか」
「不器用だが漢気に満ちていてな」
 そしてというのだ。
「無口だが人の心は確かな」
「本当に高倉健さんみたいな人か」
「ああした方が理想だ」
 武士の様な男以外にというのだ。
「実はな」
「そうなんだな」
「うむ、中々いない方だが」
 それでもというのだ。
「お会い出来たなら一生添い遂げたい」
「高倉健さんとならか」
「別れた奥さんとの約束を終生守り抜いたのだ」
 二度と結婚しない、この約束を守り抜いたまま世を去った。映画に対する態度も無口かつ真面目でスタッフ達もその姿勢に惹かれたという。
「あの様な方ならな」
「あと武士か」
「高倉健さんは武士というよりはな」
「侠客か」
「そうした方だと思う」
 その生き方、人としての在り方はというのだ。
「だから武士ではないが」
「それでもか」
「理想の方だ、だが私は一人の方と出会えたなら」
「その人とか」
「一生添い遂げる」
 この言葉は絶対のものだった、目にかけているサングラスにも強い光が宿った。
「必ずな」
「一生その人とか」
「そうだ、共に生きる」
「浮気なんてしないか」
「する筈がない」
 何があろうともという言葉だった。
「私の全てはその人と共にある」
「そうなるのか」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「その時はな」
「凄いな、日毬ちゃんも武士だな」
「私もか」
「ああ、代々武士の家系だけあるな」
 幸田は日毬にこうも言った。
「三河以来の旗本の家でな」
「確かに武士の家の出だがな」
「心も武士だな」
 そうだというのだ。
「まさに」
「そうありたいと思い常に修行に励んでいる」
「そうなんだな」
「鍛錬もしている」
 心身のそれもというのだ。
「日々な」
「そうなんだな」
「女だが武士だ」
 自分自身のことをこう言う日毬だった。
「まさにな、だからだ」
「結婚してもか」
「その人と共に生きる」
「ずっとか」
「そうだ、その心は変わらない」
 決して、という言葉だった。
「まさにな」
「今時そんな強い誓い持ってる娘いないぜ」
「そうよね」
 まさにとだ、麻友も幸田に続いて言った。 
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