夢幻水滸伝

「相手に気付かれるわよね」
「相手は芥川だからな」
「関西の軍師さんのね」
「四智星の一人だぞ」
「それだけによね」
「ああ、迂闊に退いたらな」
「その時点でよね」
　麻友も警戒する顔になり言った。
「もうすぐにでも」
「色々気付かれるからな」
「私達が奇襲を仕掛けることとか」
「その時期とかもな」
「それで気付かれてよね」
「綾乃ちゃんに連絡されるわ、そうなったらな」　
　まさにというのだ。
「奇襲をしてもな」
「事前に備えられるとね」
「奇襲は失敗するだろ」
「ええ」
　その通りだとだ、麻友も答えた。
「その時点でね」
「だからな」
「迂闊には退かせないの」
「ああ、だからここはな」
「ここは？」
「考えてみたが奇襲を仕掛けるその時にな」
　まさにその時にというのだ。
「退かせるか」
「そうするのね」
「ああ、後な」
「後？」
「もう一つやることがあるからな」
　それはというと。
「精鋭を集めないとな」
「三千だな」
　それだけをとだ、日毬が言ってきた。
「それだけだな」
「ああ、こっちの軍勢からな」
「三千を選んでだな」
「その連中を率いてな」
　そのうえでというのだ。
「綾乃ちゃんがいる相手の本陣に奇襲だ」
「そうするな」
「兵は多くはいらないんだよ」
　その時はとだ、幸田は強い表情で言い切った。
「もうな」
「三千を選んでか」
「強い奴だけをな」
「そうしてその三千を空船に乗せるか」
「ああ、そのうえで低い場所を飛んでな」
　そしてというのだ。
「夜に攻めるぞ」
「わかった、ではな」
「攻めるぞ」
　こう言ってだ、そのうえでだった。
　幸田はそれぞれの場所で戦っている東国の兵達に貝殻で連絡をした、そうしてそれぞれに精鋭を選ばさせた。それは当然幸田達も行った。
　そしてだ、選び終えた後でこう言ったのだった。
「よし、じゃあな」
「後はよね」
「機会が来ればな」
「あたし達とよね」
　麻友は幸田に言った。
「三千の兵が転移の術とかで移動して」
「一気に集まってな」
「そしてよね」
「綾乃ちゃんに奇襲だ」
「それを仕掛けるのね」
「ああ」
　その通りだとだ、幸田は綾乃に答えた。
「そうするからな」
「わかったわ、いよいよその時が来たのね」
「そうだ、じゃあ行くからな」
「その時が来たら」
「いよいよだ、何ていうかな」
　幸田は不敵な笑みになって述べた。
「もう耐えに耐えてだったな」
「そう言われれますと」
　千歳は幸田の耐えに耐えてという言葉に突っ込みを入れた。
「網走番外地の様ですね」
「高倉健さんか」
「あの方の様ですね」
「あんなに恰好よくないぜ、おいら」
「そう言われます？」
「あんな恰好いい人そうそういるか」
　千歳にかなり真剣な顔で返した。