夢幻水滸伝
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第六十話 兵達の慢心その五
「まさにな」
「では敵軍が水戸城を出たら」
「三日後辺りにな」
「夜にですね」
「向こうの棟梁さんにいる本陣にな」
まさにそこにというのだ。
「おいら達九人で奇襲しかけるぜ」
「九人で一気にかかれば」
「勝てる、幾ら綾乃ちゃんでも寝込みを襲う形になれば」
そうであればというのだ。
「勝てる、だからな」
「そろそろですね」
「仕掛けるからな」
「わかりました、待っていました」
千歳は微笑み幸田に話した、今彼女は日毬の右肩に乗せてもらっていてそこから幸田に話をしていた。
「この時を」
「おいらもだよ、というかな」
「棟梁がですね」
「一番待っていただろうな」
笑ってこう言うのだった。
「本当に」
「逆転の時をですね」
「そうよ、負けて負けてな」
「ここぞという時にですね」
「奇襲仕掛けてな」
そうしてというのだ。
「大逆転よ」
「そうなる時をですね」
「待っていたんだよ、じゃあ兵達はな」
「はい、私達が出た後は」
「江戸城に入らせる」
その様に命じておくというのだ。
「無駄に戦をするよりもな」
「そうしますね」
「どうせ負けるわ」
これが幸田の見立てだった。
「おいら達がいないとな」
「それではですね」
「ああ、連中の将は芥川だからな」
彼だからだというのだ。
「他にも大勢の星の奴等もいるしな」
「その軍勢と星の者なしで戦うとな」
「勝てる筈がないだろ」
日毬にも応えた。
「そうだろ」
「その通りだ」
日毬も否定せずに答えた。
「今もかろうじて止めている位だ」
「守りを固めてな」
「その様な状況ではだ」
とてもというのだ。
「勝てるものではない」
「おいら達が全員いなくなるとな」
「だからだな」
「もうここも江戸の町もあえて引き渡してでもな」
「軍勢を江戸城に退かせてか」
「そのうえでな」
「兵を維持させてか」
「ああ、おいら達はその間にな」
「紫殿を攻めるか」
「そうするんだよ」
まさにというのだ。
「そうすれば武蔵も江戸の町を引き渡してもだ」
「一時のことでか」
「そこから一気にひっくり返せるからな」
だからだというのだ。
「いいんだよ」
「そういうことだな」
「ああ、じゃあいいな」
「仕掛けるか」
「そうするからな」
是非にと言うのだった、そしてだった。
麻友もだ、幸田に対して言った。
「じゃあ私達が紫先輩のところに行くと同時に?」
「それだな、若しな」
「迂闊に退かせるとよね」
軍勢をとだ、麻友も言った。
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