夢幻水滸伝
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第六十話 兵達の慢心その一
第六十話 兵達の慢心
中里が率いる軍勢の上総及び下総への侵攻は順調だった、武者小路と有島はゲリラ戦術で応じていたが兵も装備も星の者達の数も中里が率いる軍勢が圧倒していてだ。
彼が率いる関西の軍勢は上総及び下総だけでなく安房にもだった。
兵を進めさせていた、中里はその状況に本陣で言った。
「この状況はいいがな」
「わし等の軍勢はな」
「ああ、しかしな」
それでもとだ、中里は本陣で自分の隣にいる鵺に話した。
「問題は綾乃ちゃんの方や」
「そっちやな」
「戦は総大将がおるとな」
「総大将の首取ったら勝ちや」
「逆に取られたら負けや」
「そや、それでや」
ここではというのだ。
「綾乃ちゃんがどうかやけど」
「そっちはもう綾乃ちゃん次第やろ」
「ああ、けど綾乃ちゃん自身術強いし三種の神器があってな」
「八岐大蛇もおるな」
「そやからな」
これだけのものが揃っているからだというのだ。
「それでや」
「まず大丈夫やな」
「まずやな、やっぱり不安もあるわ」
「戦に絶対はないからな」
「綾乃ちゃんが勝てたらええな」
「ああ、そろそろあっちは水戸城攻めや」
常陸の中心地であるこの城のというのだ。
「あそこを攻め落としたらもう北関東は完全に掌握や」
「そうなるな」
「戦略的には大きい、しかしな」
「戦はそれで終わりやない」
「東北、蝦夷も攻める」
中里は鵺にこのことも話した。
「そう思うとや」
「まだまだ戦は続くからな」
「そこを狙って来るわ」
「敵はな」
「何時何処で攻めて来るか」
「僕の勘ではや」
鋭い顔になってだ、中里は鵺に話した。
「水戸城を攻め落とすやろ」
「そこでやな」
「来るわ、東北攻めに入った時にな」
その辺りにというのだ。
「そうしてくるわ」
「北関東掌握、戦略の最大重要目的の一つを達成してな」
「やっぱり将兵達は自分ではちゃうと思っててもな」
「それは主観やな」
「そや」
それでというのだ。
「無意識のうちに勝ち戦が続いて油断する、しかも相手を数や装備で圧倒してて補給も万全とくればな」
「負ける要素がないって思ってやな」
「余計に油断する、慢心するわ」
「そうした軍隊程攻めやすいもんはない」
「奇襲しやすいわ」
まさにというのだ。
「それでや」
「水戸城を攻め落として東北に進軍しはじめた時か」
「その時がやばい、おそらくな」
「おそらく?」
「敵はもう北関東を放棄したふりをするわ」
水戸城での戦が終わればというのだ。
「そうして東北に兵を集中させてな」
「迎え撃つ様にか」
「見せる、将兵の目はそっちに行く」
東北の敵の方にというのだ。
「そしてそこでや」
「奇襲やな」
「そうしてくるわ」
「そうなるか」
「そやろな、ここで綾乃ちゃんを狙うわ」
関西の棟梁、即ち総大将である彼女をというのだ。
「そうしてくるわ」
「そうなるか」
「絶対な、もう綾乃ちゃんに任せる」
このことはというのだ。
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