夢幻水滸伝
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第五十九話 仕込みの奇襲その十三
「そうしましょう」
「わかったで」
綾乃は鈴子の言葉に笑顔で頷いた、そうしてだった。
自身が率いる軍勢を水戸にと進ませていった、宇都宮から常陸への道もあり進軍自体は比較的順調だった。
だが常陸に入ってだ、兵達は現地で買った食事についてここでこんなことを言い合った。
「うわ、出たな」
「ほんまやな」
「絶対に出て来るって思ってたけどな」
「常陸に入ったら」
この国ならとだ、主に関西の兵達が話していた。
「これは絶対やと思うてたけど」
「実際に出て来たで」
「納豆な」
「もう予想通りやな」
納豆、大豆を発酵させていて糸を引く様になっているその食べものを見てだ。彼等はそれぞれ話をしていた。
「常陸やと納豆」
「もうこれは絶対やな」
「御飯にかけて食えってことやな」
「絶対にそやな」
こう話しながらだ、彼等はその納豆にたれや醤油をかけて箸でかき混ぜて御飯にかける。中には刻み葱を入れている者もいる。
そうして御飯を食べつつだ、彼等はこんなことも言い合った。
「食うたら美味いけどな」
「この糸が最初びっくりしたわ」
「匂いにもな」
「何でこんなん食うんやってな」
「うちのおとん今も食わんで」
「うちのおかんもや」
こんなことを話していた。
「こんなん食いもんやないって言うてな」
「うちの祖父ちゃん納豆見たら怒るしな」
「うちの祖母ちゃん九州生まれでもそうたい」
「わしの親父安芸じゃが食わんわ」
それぞれの地域の兵達も言う、とかく納豆は賛否両論で食べない兵達もいた。
だが玲子は優に普通の飯なら五杯は入る巨大な丼にこれでもかと入れている御飯の上にその納豆、そこに葱とたれと辛子を入れたそれをたっぷりと入れてそれで豪快に喰らいながら笑ってこんなことを言った。
「やっぱり常陸の納豆は美味いよな」
「先輩納豆も大好きなんですね」
「色々食べる人ですけど」
「まあうち等も嫌いやないですけど」
「これまた豪快に食べますね」
「ああ、あたしは匂いがする食いものは特に好きでな」
玲子は共に食べている瑠璃子達に話した。
「それでな」
「納豆はですか」
「かなり好きですか」
「それで今みたいに豪快に食べてますか」
「丼飯で」
「そうさ、しかも納豆は身体にいいだろ」
このことについても言う玲子だった。
「そうだろ」
「はい、大豆ですし」
「身体にええのは確かです」
「味も実はあっさりしてますし」
「御飯にもよく合います」
「これは食わないとね」
食べつつ是非にと言うのだった。
「駄目だろ、しかも今日のおかずは他にもいいしな」
「メザシと梅干、もやしのぽん酢漬けにですね」
「茸の味噌汁です」
「身体にええのばかりです」
「大豆系多くて」
もやしに味噌も大豆だからである。
「これは長生き出来る献立ですわ」
「茸は椎茸入ってますし」
「梅干しも美味しいですし」
「力も出ます」
「そうだろ、納豆をたらふく食ってな」
そうしてと言う玲子だった、食べるのは止めていない。
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