夢幻水滸伝
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第五十九話 仕込みの奇襲その一
第五十九話 仕込みの奇襲
遠藤は宮沢と宮子、そして率いている兵達を連れて宇都宮城を出た。そうしてこちらに向かって来ている綾乃が率いる関西の軍勢を攻めようとした。
だがその彼等をだ、関西の軍勢の空船や翼人の兵達がだった。
山陰に隠れている彼等をすぐに発見してそのうえで綾乃達に報告した。
「敵が北東にいます」
「そっちからやね」
「はい、攻めようとしてきているかと」
報告に来た兵が綾乃に答えた。
「どうやら」
「そやろね」
綾乃も兵の言葉に頷いて応えた。
「やっぱり」
「はい、それではですね」
「奇襲に備えておこか」
綾乃は兵に穏やかな声で答えた。
「そうしよか」
「はい、それでは」
「全軍警戒態勢強めてや」
綾乃はすぐに支持を出した。
「そしてや」
「そのうえで、ですね」
綾乃の傍にいた瑠璃子が応えた、見れば四人全員いる、
「敵が来たら」
「迎え撃とうな」
「わかりました」
「ほなうち等もです」
紗枝も言ってきた。
「戦の用意に入りますわ」
「そうしてな」
「忙しくなりますね」
「いや、来るかもって思ってましたけど」
雅美も言ってきた。
「出てきましたか」
「籠城やなくて」
「強気ですね、相手も」
「まあ前が籠城やったしな」
四人のうちで最後に言ったのは由香だった。
「今度はうって出るっていうのも」
「同じことしても芸ないし」
「それもありですわ」
「ほなこれからな」
綾乃は今度は四人全員に話した。
「戦の用意しよな、ここはあえて」
「あえて?」
「あえてっていいますと」
「一体」
「どうするんですか?」
「迎え撃つ姿勢固めるか」
微笑んでだ、四人にこう言ったのだった。
「奇襲仕掛けようにも見付けられるって」
「そうするんですか」
「ここはですか」
「あえてですか」
「相手にそれを見せるんですか」
「そうしたら多分やけど」
確実ではないがとだ、綾乃はこう前置きしてさらに述べた。
「相手は次攻める時めっちゃ慎重に来るやん」
「今回はあっさり見破られたから」
「そやからですか」
「次はめっちゃ慎重に来る」
「そやからですか」
「それでやねん」
綾乃は今も落ち着いた口調で話していく、穏やかなそれは実に淀みなくそして色のないものだった。
「今は」
「敵をそうさせる為に」
「あえてですか」
「守りを固めて迎え撃つ」
「そうしますか」
「そうしよな、それで次もな」
次の奇襲の時もというのだ、東国の。
「勝とうな」
「その勝つ為のですか」
「今は仕込みですか」
「相手も仕込んでるみたいですし」
「こっちも仕込みますか」
「芥川君が言うてたけど戦は化かし合いっていうし」
詭道、それだというのだ。こちらが化かしてくるのなら相手も化かしてくる。人間同士ならば当然としてこうなる。
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