八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百六十話 午後に何をするのかその六
「須磨ね」
「うん、源氏の君が須磨に行く時ね」
「あの場面は有名だしね」
源氏物語の中でだ、物語全体の中で源氏の君の次のステップへの備えと新しい恋人を見出すことになる重要な場面だ。
「今も観光名所みたいになってるし。平家物語でもね」
「福原に清盛さんが遷都してるし」
今度は詩織さんが言ってきた。
「一ノ谷の戦いもあったり」
「それで有名よね」
「それでも戦国時代はね」
どうしてもだ。
「兵庫は影が薄いんだ、蝦夷時代は姫路城があって」
「あと赤穂藩?」
「忠臣蔵の」
「そういうお話で有名だけれどね」
江戸時代ではだ。
「戦国時代は違うんだ」
「どうしても影が薄くて」
「遊ぶ大名も困るのね」
「だから信長さんを選ぶことが多いんだ」
兵庫県民の僕はだ。
「これ大阪や奈良や兵庫や三重でもそうじゃないかな」
「何処も信長さんの領土になってるから」
「それでなの」
「滋賀だったら浅井家があるけれど」
北の方だけであってもだ。
「それでもね」
「兵庫の人とかはそうなのね」
「信長さんなのね」
「あの人は人気も高いからね」
何といっても戦国時代どころか日本の歴史上でも屈指の有名人で人気者だ、それだけに遊ぶならだ。
「それでなんだ」
「信長さんなのね」
「成程ね」
「そうなんだ」
「私はね」
ここで香織さんが言ってきた。
「戦国時代はね」
「北海道は?」
「ちょっとね」
詩織さん以上に微妙な顔になっての返事だった。
「これといってだから」
「けれど北海道にも大名いたよね」
「そうよね」
僕だけでなく詩織さんも言ってきた。
「確か松前氏よね」
「北海道の先の方だったっけ」
「確か大部分はアイヌの人が暮らしてて」
「実際は北海道の函館辺りが領地だったんだよね」
「その辺りは領地にしていたけれど」
それでもとだ、香織さんは微妙な顔のままで言ってきた。
「当時はまだ蠣崎氏っていったし」
「そうだったんだ」
「後で名前が変えたの」
「松前氏に?」
「そうなの、江戸時代になるかならないかの頃に」
大体その頃にというのだ。
「名前を変えたの、その前は武田氏ともいったし」
「武田っていうと」
「あの甲斐の武田家の親戚だったってね」
「そうだったんだ」
「違うって説もあるけれど」
この辺りはどうもわからないとのことだ。
「まあそうらしいわ」
「武田家の流れだったんだ」
「その家があったけれど」
「それでもだったんだ」
「凄く影が薄いでしょ」
「それはね」
僕は返答に困りながら香織さんに答えた。
「こう言ったら美沙さんもだけれど」
「他軌道が開かれるのは明治以降でしょ」
「明治維新から大々的に開発が行われるんだよね」
「そうなるからね」
「香織さんにしてみたら」
「戦国時代もその前もね」
「それで江戸時代も」
「ちょっとね」
どうにもという返事は変わらなかった。
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