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夢幻水滸伝

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第五十七話 仕掛ける場所その七

「いいわね」
「それでは」
「しかし、やっぱり強いわね」
 武者小路は今度はやれやれといった笑みでこの言葉を出した。
「関西の軍勢は」
「ですね、数に装備に」
「星の人達の力も凄くて」
「そのせいで」
「強いわ」
 このことを素直に言うのだった。
「本当に」
「神星の旦那が率いてるだけあって」
「中里さんがね、あたいはこれでも女の子が好きだけれど」
「そうでしたか」
 有島は武者小路のその告白には驚いて返した。
「あっしはてっきり」
「そっちの趣味だと思っていたのね」
「へい」
 実際にという返事だった。
「その口調と物腰ですから」
「趣味も乙女なものばかりだしね」
「お料理にお洗濯にお裁縫にと」
「全部好きだけれどね」
「それでもですか」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「あたいは女の子が好きなのよ」
「そうでしたか」
「そっちの趣味はないわ」
 同性愛はというのだ。
「生憎ね」
「そして女の子が好きでもですか」
「あの戦ぶりは聞いているだけでね」
「惚れますか」
「敵ながらね」
 そうなるというのだ。
「だからこそ出来れば」
「勝ってそのうえで」
「一緒に戦いたいわ」
 味方同士となってというのだ。
「是非ね、じゃあ見破られて逆に攻められている伏兵達は」
「退けさせますか」
「この横浜までね、そしてね」
「横浜で戦い」
「きりのいいところで港から上総に逃げるわよ」
 撤退するというのだ、武者小路はこのことまで考えていた。
「いいわね」
「はい、では」
「戦いは続けていきましょう」
 例え劣勢でもだ、それは行ってと言って実際にだった。
「しっかりね」
「これからの為にも」
「そう、勝つ為にもね」
 最後の最後にとだ、こう話してだった。
 二人も戦い続けていた、確かに彼等にとっては劣勢で辛い戦いであったがそれでも彼等は諦めていなかった。それで戦い続けていた。
 綾乃は厩橋城の修繕を終えると次は兵を下野に進めていた、その中で。 
 室生は軍議の時に綾乃に厳しい顔で言った。
「問題は、です」
「こっちが攻めていってやね」
「はい、油断した時です」
「兵達がそうなった時やね」
「今兵達はいい緊張状態にあります」
 室生はこのことも話した。
「身体が強張らずにです」
「周りを警戒して戦にも向かっていってて」
「いい緊張状態です、しかし」
「戦が続いて慣れてやね」
「そうして勝ち続けてです」
 そうなっていってというのだ。
「油断、驕りが生じる」
「その時が危ないやろね」
「はい、我々はこのまま下野を攻め取りさらに東に向かいますが」
「目的地は常陸の水戸です」
 鈴子が室生に応えて言ってきた。
「次は」
「そうだ、今度は水戸城を拠点として東北に攻め上がるが」
 江戸や上方から見れば下るとなるが室生は今は北上という言葉からこう言った。 
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