夢幻水滸伝
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第五十七話 仕掛ける場所その五
「あまりいい顔でお話しないわ」
「そうですか」
「ええ、だから聞くにしてもね」
「気持ちよくは話してくれませんか」
「そうした戦争よ」
「戦は何時でも惨いものにしても」
「三十年戦争は特にだったのよ」
武者小路は有島にこうも話した。
「何しろ宗教が関わっていたからね」
「宗教、信念が関わると人は変わりますからね」
「よくも悪くもね、そして三十年戦争ではね」
これは十字軍もそうだった、戦争でなくても異端審問もそうだった。
「最悪の形で出たのよ」
「人の宗教への信念が」
「それで最悪の殺し合いになったのよ、食い詰めた傭兵達も入って」
この者達も問題だった、食い詰めた者達は食う為にあらゆることをしようとするものだ。それが特にモラルがない者達ならば余計にだ。
「そうしてね」
「無残な戦争になりましたか」
「そうよ、それで本題に戻るけれど」
「三十年戦争もまた」
「ハプスブルク家は最後の方まで勝っていたのよ」
「それが、ですね」
「最後で負けたわ、だからね」
「あっし達にしても」
「戦いが終わった時に笑っていればいいのよ」
まさにその時にというのだ。
「そうなっていればいいのよ」
「そういうことですね」
「そう、だからね」
「あっし達は今は負けて」
「そうよ、負けて負けてね」
そうしてというのだ。
「相手が油断したところで」
「一気に大将首を狙う」
「そうするのよ」
まさにというのだ。
「いいわね」
「はい」
有島も確かな顔で応えた。
「それなら、今は」
「負けてもね」
「それを受け入れます」
「そうよ、あんたとしては嫌だけれどね」
「あっしは頭が悪いので」
有島は自分の頭の後ろを掻きつつ武者小路に答えた。
「ですから」
「そう言うのね、けれど」
「あっしが馬鹿ではないと」
「そう思うけれど」
「いえいえ、あっしは教えてもらったことしかわかりません」
こう言うのだった。
「学問でも」
「別に赤点は取ってないでしょ」
「まあそうですが」
「あんたは普通に頭の出来は悪くないわ」
武者小路から見てもだ。
「だからね」
「それで、ですか」
「ええ、こうしたこともわかると思うけれど」
「まあ今は我慢する時だってことは」
「わかるわね、本当のお馬鹿ちゃんときたら」
つまり真の意味での愚者はというのだ。
「ここで言われても勝手なことをしてね」
「勝とうと思って動いて」
「それで負けて自分でさらに勝手に降伏とかしてね」
「取り返しのつかないことをしますか」
「そうしたお馬鹿ちゃんはあたいも切って捨てるわ」
武者小路はその目を光らせて言った。
「邪魔、もっと言えば皆にとって迷惑だから」
「どうしようもない人間ってことですか」
「そうよ」
まさにというのだ。
「戦自体に悪影響を与えるから」
「言うことを聞かず勝手なことをして戦を負けに追いやる」
「それだけで充分でしょ」
「切って捨てるには」
「そうしてでも止めるわ、切って捨てた後は」
それからのことも話す武者小路だった。
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