夢幻水滸伝
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第五十七話 仕掛ける場所その三
「今の戦はな」
「敵の策に乗っている戦ですね」
「そうなるな、しかしな」
「それでもですね」
「攻めるのを止めるとな」
そうすればというのだ。
「もうな」
「それで、ですね」
「相手は見抜かれてると勘付く、幸田は勘がええ奴やっていう」
敵の棟梁である彼のこのことも頭に入れて話した。
「それやったらな」
「こちらの考えをですね」
「見抜いてや」
そうしてきてというのだ。
「別の動きをしてくるわ」
「そうなりますね、それはそれで」
「そや、それやからや」
「我々は今は」
「しっかり攻めてく」
当初の考え通りにというのだ。
「相模の街も伊豆も抑えてな」
「上総、下総とですね」
「攻めてこな、江戸湾も完全に抑える」
海もというのだ。
「そうしてくで」
「それでは」
「ああ、正直綾乃ちゃんを倒そうと思ってもな」
東国の者達がというのだ。
「そうはいかんわ」
「桶狭間や沖田畷と違い」
「綾乃ちゃんは強い、しかもどっちの戦もあれやろ」
「はい、地の利を生かしています」
勝った織田家も島津家もというのだ。
「策を練りに練り」
「織田信長さんかてな」
「あれは閃きではなく」
「地の利と気候を頭に入れてな」
それも完全にだ、信長は攻める今川家の軍勢の進路のことを頭に入れてそのうえで当初動いていなかったのだ。
「敵の動きも常に情報を集めて」
「把握してです」
「相手が油断しきったそこでな」
「一気にでした」
まさにその瞬間を狙ってだったのだ、龍造寺家の場合は勇んで攻めて周りが見えていない状況であった。
「攻めてそうしてです」
「勝ってる、そやけどな」
「こちらはですね」
「綾乃ちゃんはそう油断せんしな」
綾乃はそうしたことはない、とかく慎重で常に周りを警戒して進むタイプだ。
「しかも大蛇もおるし術も神具もある」
「そうはですね」
「やられんわ、どれだけ上手に奇襲を仕掛けてもな」
「姫巫女殿はですね」
「そうは討ち取れんわ」
桶狭間や沖田畷の様にというのだ。
「無理や、そやからな」
「東国もですね」
「勝つのは難しい、まあ向こうもな」
東国の方もというのだ。
「勝とうって思ったらな」
「その時は」
「そうでもせんとな」
「勝てないと自分達でもわかっているのですね」
「乾坤一擲の勝負や」
逆転、一気にそれを狙ったというのだ。
「そうした戦やしな」
「だからですね」
「ほんまに必死にや」
それこそというのだ。
「仕掛けて来る、それでもな」
「姫巫女殿はですね」
「綾乃ちゃんは討ち取れんわ」
到底というのだ。
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