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夢幻水滸伝

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第五十七話 仕掛ける場所その二

「どうもです」
「あからさまにな」
「兵法の流れに忠実に従った」
「そうした伏兵の配置やな」
「見事なまでの」
「そう、見事なまでにや」
 まさにとだ、中里は美鈴に話した。
「もう大軍が攻め寄せてくるけどこっちの兵は少ない」
「それでどう戦うか」
「その場合の兵の配置や」
「森や山、一撃を仕掛けた後すぐに逃げられる場所にだけ兵を配しています」
「常にな、これはな」
「如何にも、ですね」
「そや、如何にも戦ってます」 
 中里はいささかシニカルな口調で述べた。
「そんな配置やな」
「そうですね、これは」
「やっぱり何かあるな」
「この戦自体に」
「そや、どう見てもや」
 まさにというのだ。
「仕込みやな」
「大事をする前の」
「そしてその仕込みは」
「逆転や」 
 東国から見てとだ、中里は強い声で言った。
「それを狙ってるわ」
「そうですね、そしてその逆転は」
「大将首、綾乃ちゃんを狙う」
「そうしたものですね」
「そやろな、僕とか芥川を討ってもな」
「それは確かに大きいですが」
 美鈴も考える顔になって言う。
「しかし」
「そやろ、それでも決定的な勝利やない」
 やはり東国から見てだ、中里は美鈴に話した。
「ある方面を攻めて来ている敵軍をやっつけた」
「それだけに過ぎないですね」
「僕や芥川を倒してもどっちか一方はまだおる、しかしな」
「姫巫女殿を倒せば」
 美鈴も九州の訛りが強い敬語で応えた。
「それで」
「そや、うちはそれだけで負けや」
「総大将を討ち取ればそれで相手の勝利です」
「桶狭間もそやったしな」
「沖田畷でも」
 どちらも総大将が討たれて勝敗が決している、もっと言えば敗れた今川家も龍造寺家もこの敗北から一気に傾いている。
「そうですし」
「そやったらな」
「こちらが総大将御自ら出陣されているなら」
「そや、綾乃ちゃんに仕掛ける」
「そうしてきますね」
「それは実はこいつとも話してん」
 中里は自分が乗る鵺を見て美鈴に話した。
「そうしてくるやろってな」
「そうでしたか」
「お好み焼き食いながらな、ほんまにな」
「相手の考えはですね」
「そこやろな」
「姫巫女殿ですね」
「そやろな、もう総出で襲い掛かるか」
 東国の星の者達でというのだ。
「そうしてや」
「一気に攻めてそうして」
「まさに大将首挙げてや」
 倒すなり捕虜にするなりしてというのだ。
「形成を一気に逆転させるわ」
「そうしようと狙っていますか」
「そうなるな、何かこう考えてくと」
 まさにとだ、中里は鋭い目で美鈴に話した。 
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