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夢幻水滸伝

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第五十六話 幸先よい勝利その十四

「連中の心臓をな」
「そして綾乃ちゃんは、ってことや」
「上野から下野と進んでくんやな」
「そこから東北や」
「兵の数と攻める側の利点思いきり使ってるな」
「ああ、ほんまにな」
 攻撃側は攻撃する場所を自由に選べる、攻撃側の利点の一つで防御側はこれにどう対応するかが重要となるのだ。
「流石軍師やな」
「四智星の一人でな」
「それだけはあるわ、ほな今日はな」
「飲むな、まだ」
「ああ、自分もまだ飲めるやろ」
「当たり前や」
 鵺はまた新しいお好み焼きを食べていた、今度は広島風である。
「これからや」
「よし、ほな今日も飲むか」
「お好み焼きも食べてな」
「焼きそばもあるで」
 中里はこちらの食べものの話もした、とはいっても彼は今はまだお好み焼きを食べている。
「そっちもな」
「ああ、それもあったな」
「あとモダン焼きもな」
「焼きそばとお好み焼き混ぜたあれやな」
「あれもどうや」
 こう鵺に問うた。
「食うか?」
 モダン焼き、それもというのだ。
「そうするか?」
「どうしよか」
「今自分が食うてる広島風の後にな」
「食えばええか」
「そや、しかし広島風もな」
 中里はこちらのお好み焼きの話もした。
「こっちじゃ安芸風ともいうけどな」
「それで大坂のは摂津風な」
「そう言うけどそっちはそっちでな」
「美味いで」
「そやねんな、これが」
「そやから安芸は安芸で食うてるんや」
 この国の民達は自分達のお好み焼きをというのだ。
「そうしてるんや」
「そやな」
「そういうことや、というかな」
「というか?」
「自分はさっきから大阪風ばっか食うてるな」
「好きやからな」
 芥川の返事は単純明快なものだった。
「そやからや」
「それでか」
「そや、僕は関西人やしな」
「お好み焼きはそっちか」
「そや、そういえばここは東国やからもんじゃやが」
 この焼きものの話もするのだった。
「食うてる奴おらんな」
「あれ美味いんか?」
「正直に言うと知らん」
 即答、それも実にあっさりとしたものだった。
「食うたことないし興味もや」
「ないか」
「お好み焼きで充分やろ、ほなな」
「お好み焼きの後はか」
「焼きそばいこか」
「そやな、ソース焼きそばがええわ」
 鵺は焼きそばの種類も言った。
「ソーセージでな」
「わかった、じゃあ僕もそれ食うわ」
「ソースでソーセージの焼きそばやな」
「それ食うわ、それと杯出せ」
 鵺の杯が空いているのを見ての言葉だ。
「ビール入れるわ」
「済まんのう」
「こうしたことはお互い様や」
 中里は自身の神具に笑って返した、箱根での戦に勝った関西の軍勢は今は酒と美味いものを楽しんでいた。しかしその間にも戦は動いていて彼等もそちらに気を向け続けていた。


第五十六話   完


                2018・3・1 
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