八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百五十七話 お袋のことその十四
「面白いです」
「そうなんですね」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから楽しんで、です」
「学問をしていく」
「そうしています」
「そうですか」
「そしてです」
さらに話してくれた。
「コリオレイナスの他の作品もです」
「読まれていますか」
「ウィンザーの陽気な女房達も好きです」
「ああ、あの作品ですね」
僕も読んだことがある作品で応えられた。
「フォルスタッフの出て来る」
「彼が主人公ですね」
「歌劇にもなってましたね」
歌劇部の上演で演目があったのを覚えている。
「ヴェルディの」
「あちらはファルスタッフですね」
「イタリア語読みですね」
「はい、ォがァになっています」
日本語だと小文字が違うだけだ。
「そうなっています」
「キャラクターは同じですね、大体」
「歌劇の方が賢者かと」
「あっ、そうなんですか」
「原作者のシェークスピアの知性に加えて作曲者と脚本家のそれも入って」
ヴェルディと確か脚本家はボーイトという人だった。
「原作以上に賢者です」
「そうなんですか」
「確かに女好きで図々しく無反省な人物ですが」
こう書くとかなりとんでもない人物だ。
「ですがそれでも憎めないですね」
「不思議と」
「その人物がです」
「より賢者ですか」
「元々愚かではないですね」
「結構知恵もあるんですよね」
とんでもない人間性でも魅力もあってしかも頭も悪くはない、フォルスタッフはそんなキャラクターだ。
「あれで」
「その人物像がです」
「さらにですか」
「賢者になっています」
「それで歌劇も面白いですか」
「そうなのです」
「何かそう聞いていますと」
僕にしてもだ。
「観たくなりますね」
「ファルスタッフをですね」
「どうにも」
「それはいいことです、楽しい学問になります」
歌劇の方のあの老騎士を観ることもというのだ。
「ですから」
「そちらもですか」
「今度上演がありましたら」
その時はというのだ。
「御覧になって下さい」
「そうさせてもらいます」
「ヴェルディの屈指の名作でもありますから」
「作品としてもいいんですか」
「そうです、しかもこの作曲家には少ない喜劇です」
ヴェルディは何か悲劇というイメージがある、登場人物それもメインの誰かが結末では死ぬ。ただしハッピーエンドが多い。誰かが死ぬハッピーエンドもあるということだろう。
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