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夢幻水滸伝

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第五十六話 幸先よい勝利その十

「それを素早く三つ続けてやとな」
「まず無理や」
「人間には疲労があるさかいな」
「そやな、そう考えると」
「最初に姫巫女さんを狙ってや」
 綾乃が率いる軍勢を攻める中でも彼女自身をというのだ。
「そうしてその首を取る」
「そうすればもう形勢は逆転や」
「東国に一気に傾く」
「そうなるな」
「こう考えていくと答えは出るな」
「ああ、今の連中の戦はその為の仕込みや」
「姫巫女さんを一気に攻める為のな」
 まさにというのだ。
「策を隠す為の戦やろ」
「そうなるか、ほな綾乃ちゃんに言っておくか」
「待て、姫巫女さんそんなアホか」
 鵺は貝殻を出そうとした中里にすぐに問うた。
「そんなこと気付かん様な」
「おっとりしてるけど頭はええで」
「そやな、しかも姫巫女さんの神具は三種の神器にや」
「八岐大蛇や」
「東国の星のモンが束になって攻めてもそうそうやっつけられんや」
「僕と芥川が戦ってやっとか?」
 綾乃の強さはとだ、中里は冷静な顔で言った。ビールを飲んではいるがその顔にはまだ酔いは見られていない。
「互角か」
「わしと狐も入れてな」
「三種の神器の守りと力、大蛇のあの型破りの破壊力があるからな」
「しかも姫巫女さん四つの系統の術全部使えるやろ」
「魔術師、僧侶、超能力、錬金術のな」
「そこまで強いとな、九人で攻めてもな」
「少なくとも一瞬では倒されんな」
 中里は冷静に述べた。
「そして持ち堪えてる間にな」
「姫巫女さんと一緒におる星のモンが動くな」
「そうなるな」
「そやからや」
「まず大丈夫か」
「あの姫巫女さんは実は関西最強の星のモンや」
 中里や芥川以上に強いというのだ。
「それこそな、そやからな」
「安心してええか」
「完全に寝首かかれん限りはな」
「寝首かこうにもな」
「大蛇がおるさかいな」
 今綾乃が持っているものの中でも最も戦力になっているこの神具がというのだ。
「八つの頭のうち一つは絶対に起きてるからな」
「警戒もしてるか」
「そや、そやからな」
「寝首もかかれへんか」
「試しに姫巫女さん夜這いしてみるか?」
 鵺は今度は前足でへらと箸を器用に使ってお好み焼きを食べつつ問うた。
「自分が」
「夜這いってそれはあかんやろ」
「人間としてやな」
「僕はそんな趣味はないわ」
 中里ははっきりと言い切った。
「夜這いはな、そうしたことは夜に忍び込むんやなくて」
「昼に正々堂々とやな」
「告白してや」
 その相手にというのだ。
「それからや」
「はじめるべきか」
「夜這いとか相手が寝てるとこに行くんやろ」
 文字通り寝込みにというのだ。
「それはな、恋愛やとな」
「あかんっていうんやな」
「そや、好きな奴も多いみたいやけど」
「そういうのが病みつきって奴もおるらしいな」
「その趣味はないからな」
 またこう言う中里だった。
「ほんまに」
「それで告白して振られたらどうするねん」
「その時はしゃあないな、けど振られて人格変わる奴っておるな」
「ああ、ショックでやな」
「特にそれを周りから嗤われたらな」
 そうした場合はというのだ。 
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