夢幻水滸伝
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第五十六話 幸先よい勝利その九
「何かお約束っていうかな」
「適度に戦してやな」
「適度に退いたっていうかな」
「そんな風やったっていうんやな」
「怪しまれん様にしてるみたいな」
こう言うのだった。
「そう思ったわ」
「そうやな、わしもな」
鵺も中里に自分が感じたことを話した。
「前の戦はな」
「そうした風に思ったやろ」
「ちょっと以上にな」
そうだと言うのだった、自分の主に。
「怪しいってな」
「そやな、ほな何かあるな」
「多分や」
「今の間にこっちに何かを思わせたいんやな」
中里は考える顔で言った。
「あちらさんは」
「東国の方はな」
「最初から戦ってる、決してな」
「策はない」
鵺は鋭い目になって言った、そして念動力でビールを自分が使っている鉢に入れてごくごくと飲んだ。
「そう思わせたいな」
「そうなるな」
「策があるって言う場合もあるが」
「それは別の策がある場合が普通や」
「表の策とな」
「裏の策、それで裏がほんまの策や」
こちらは本題だというのだ。
「そうなるわ」
「そやな、それでや」
「今はや」
「あえて普通に戦って」
「正攻法を徹底させてな」
「策がない様に見せる」
中里はまたお好み焼きを食べた、豚玉のそのオーソドックスだが堅実な味がソースやマヨネーズでさらに生きている。鰹節や紅生姜、青海苔もいい。
「裏に隠してる策を気付かれん為に」
「そうなるな」
「そしてその策が何か」
鵺はビールの後は自分の海老玉を食べつつ言った。
「それが問題や」
「そやな、今東国は劣勢や」
中里は鵺の言葉に目を鋭くさせて応えた。
「将兵の数も装備も星のモンの数も」
「攻められて守勢やしな」
「とにかく全部劣勢や」
「その状況でどうして勝つか」
「一発逆転を狙うな」
鵺にビールを飲みつつ応えた。
「そうなるな」
「そやな、そして一発逆転の方法は」
「今は綾乃ちゃんが出陣してる」
また酒を飲んで言った。
「それやったらな」
「姫巫女さんに奇襲を仕掛けてな」
「倒すか捕まえるか」
「どっちにしろ狙って来るな」
「そうなるな、綾乃ちゃん狙いか」
「三つの軍勢を各個撃破しようとする可能性もあるけれどな」
鵺はこの戦略も話した。
「わし等の軍勢と軍師さんの軍勢も入れてな」
「素早く各個撃破やな」
「それも出来るけどな」
「それはめっちゃ難しいな」
中里はまた豚玉を食いつつ応えた。
「正直なところ」
「そやな、三つの軍勢に星のモンが術を使って素早く移動して攻めて倒していく」
「一つの軍勢を倒すだけでもめっちゃ疲れる」
例え倒せたにしてもというのだ。
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