| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

武装神姫 ~心と心の最前線(Front Line)~

作者:太陽と月
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第一章 『ユウナ』
  第5話 自覚

 
前書き
蒸発から復元してきましたw
いやー、別にアップできたはずなんですが、何だかんだで上げずにいました…。すみませんです。ID忘れちゃうほど放置していたなんて、自分でもショックでした。 

 
 1週間後、バトルコーナーにて・・・


 「マスター! 今です!」 「FINISH」

 またできなかった。まだシミュレーションなのにこのざまだ。10回中10回とも回避できない。いつ来るのか決められたタイミングで射出されるエネルギー弾。だが全く目で追うことができず避けるは愚か防ぐことすらままならなかった。

 「えっと・・・マスター、それでは私がサポートします。 私が動くタイミングに合わせてマスターも動いてみてください。

 来ます! いm・・・ あれ? 今でs・・・ ん?」

 結果、結奈に合わせようとすると動きが一致せず何もできなかった。

 「やはりライドオンしているとはいえ、マスターもマスターの意思があり、私にも私の意志がありますから・・・、お互いの意思が反発してしまうとしたらどちらかが委ねるしかないのでしょうか・・・。」

 こうなってしまうとお手上げだ。一筋縄ではいかないシステムだと感じる。いざ真剣に向かい合って考えてみようとすると、うまくいかないということを突きつけられてしまう。今までどうやって戦えていたのかさえ、良くわからなくなってきた。

 「おぉ! やっとるなぁ! なんやさっきから演習ばっかりでつまらんやろ、こん1週間何もせんとつったっとっただけやと違うんやろ? 勝負の中でも見つかるもんはあるで?」

 「うぅ~。(声が大きすぎます・・・。)えっとですね、つまりマスターは稽古をつけてあげようと思っているんですよ。」

 「っなぁ、あいちゃん! ゆうたらあかんよ。ワシは細かいことは苦手やからホンマに勝負するつもりやったんに・・・。」

 「あ、そうだったんですか? それはすみませんでした。(あっ、いつの間にかこんなに囲まれています・・・。静かに過ごすことはできないのでしょうか・・・。)ビクビク」

 「マ、マスター。大丈夫ですか?その、ゲンさんは・・・。」

 ここで逃げるわけにはいかない。彼らと戦えたことで自分自身と結奈に向き合うことができた。戦いの結果がどうであれ変わるためのきっかけをくれたのはほかでもない彼らである。私は結奈やゲンさん達に戦う意志を見せた。

 「おっ、やる気はあるようやな。だったら、いっちょいきますか!」

 「RIDE ON」 「READY GO!!」

 意識を結奈に集中する。結奈が見ている視界、結奈が聞いている音に自分も判断を委ねる。相手の動きに注目しながらゆっくりと間合いを詰め、出方を伺っているようだ。

 「そちらから来ないのなら、こちらから攻めていきます!」

 こちらにめがけて一直線にレールが敷かれた。

 「来ます! 構えて!」

 一気に間合いが詰まる。突然のことに驚いたが結奈は変わらずあいの姿を捉えている。その次の瞬間、突如レールがY字に広がった。

 「タクティクス・01!」

 あいとすれ違う。そのまま目で追うと自分たちの後ろに入り組んだレールが多々敷かれていることに気づいた。
 しまった。すぐ逃げないとどのような攻撃が迫って来るかわからない。だが結奈は一声も上げず、あいの事を目で追い、いつでも防御できるように構えている。まさか本当に防ぎきるつもりなのだろうか。

 「マスター!来ますよ!」

 すれ違った後、遠ざかったと思いきやナイフを構えながら突然こちらに突っ込んでくる。慌てて盾を構えようとするが結奈は相手の動きを捉えようと最初の構えから微動だにしない。二人共がバラバラに考えているからこそ自らの行動をつい優先してしまおうとする。それは同時にお互いの足を引っ張り合っているということだ。このままでは傍から見ればただ突っ立っているだけにしかならない。もうあいはそこまで近づいてきている!

 「あっ! マスター! ダメです!」
半ば無理やり盾を構えた。ギリギリ間に合ったようだ。だが攻撃を受ける衝撃が感じられない。そんなはずはない。確かにあいはもうそこまで来ていたはず!

 「マスター! 気をつけて! 次の攻撃が来ます!」

 盾を目の前からそらすと、すぐ目の前には機関銃から放たれたと思われる銃弾が迫っていた。

 「きゃああああ!」

 何もできないまま全弾食らってしまう。しまった、こんなはずではなかったのに。だが、感傷に浸る隙も与えてくれないようだ。もう次の一手が差し迫っていた。あいは自身で放った銃弾を潜るように低空飛行しつつこちらに突撃して来ていた。

 「くっ・・・!」

 ダメージを受けて間もないのに、すぐに体勢を立て直したためギリギリのところで盾で防ぐことができた。結奈は一瞬たりとも気を抜けていないようだ。このままではマスターであるというのに足を引っ張るだけになってしまう。せめてあの素早い動きを見破ることさえできればいいのだが。そうこう考えているうちにまた銃弾が放たれてこちらに向かってきている。

 「マスター、怖がらないで!」

 それは、正面から立ち向かえということなのか・・・。だが手数が多く動きも素早い。どのような攻撃をしてくるかもわからない状態でまともに戦えるはずがない・・・。

「マスター、お願いします・・・。流石に、このままではエネルギーが持ちそうもありません・・・。」

!? よく見ればあまりにも被ダメージが多すぎてエネルギーが既に半分になっている。それに動きにも少し抵抗が感じられる。結奈と意思が合わないからではない。ただ単純に動きにくいと、そう感じられたのだ。結局先程の銃弾も知らない間に受けていたようだ。結奈の周りに煙が立ち込んでいる。

「どうしたんや!戦いはもう始まっとるんやで!」

「次の攻撃で決めさせてもらいます! (マスター、煙が晴れたときにもう一度責め立てましょう。私もここまで一方的になってしまうとは思いませんでした。)」

「(そうか・・・。まぁどのみち通らなあかん道や。今の間にお灸を据えてやるんも先輩たる者の仕事やろうな。)」

少しずつ煙が晴れてくる。それに連れてあらわになってくる結奈に出来てしまった傷跡。この前の戦いから何も成長できていない。もう傷つけたくないと思っていたのに。動きにくいのも左足に目に見えて傷が出来てしまっていたからだ。おそらく先ほどの剣戟を防ぎきれていなかったのだろう。怖がらないで・・・か。神姫から見ると少なくともそう捉えられるほど私は消極的になっていたのか。

 「マスター、誰しもが最初から完璧なんてことはありえないんです。失敗ばかりでもいいというわけではありませんが、そこから何かを学べるはずです。マスターはこの前の戦いから戦法の大切さを学びました。今日はその経験を活かす時、成長する時ですよ?」

 結奈・・・。ありがとう。そうだ、今から、この一瞬からでも成長すればいい。この前の戦いを踏まえて。リベンジする覚悟で。意識しない限り変わりはしない、変わらない限り成長はできない。

 「ふふっ、マスター、やっと本気ですか? 大丈夫です。私はマスターのこと信じていますからね。」

 もうすぐ煙が晴れる。その前に先ほどのゆうが見せた動きを思い返す。きっとどこかに付け入る隙はあるはずだ。ライドしている私からでも左足が動きにくいと感じてしまう。おそらく結奈にとってはそれ以上の負担に感じているだろう。できるだけ最小限の動きを意識しよう。まずは煙が晴れた瞬間に相手の位置を把握し直さなくてはいけない。先ほどのレールアクションで向こう側へのロックオンが外れてしまっている。結奈が最初にやっていたように私もしっかりと相手の動きを観察しよう。

 「これで決めます! タクティクス・01!」

 運良く前方にゆうはいた。ロックオンして相手の位置、動きを捉える。
ゆうと交差する。ナイフを構えて突撃してくる。おそらくはこれがフェイクであり近づいてきたと見せかけて銃撃するという流れなのだろう。先ほどの経験と、今考える予想から分析しようと思っていたのだが、この時の私は考えるより前にもう体が動いていた。それは私が動こうとして動いたのか結奈が動こうとして動いていたのか・・・。ゆうのナイフによる攻撃を盾で受け流し、小剣の剣先を前に突き立てながら一歩踏み込む。相手はレールアクションによる高速移動中でありこちらはあまり激しく動くことはできない。この少しだけの動きで精一杯だが、この状況なら十分なはずだ。

「ルート変更!」

 ギリギリのところでゆうが遠ざかっていく。先程もこのようにして動きを変えていたのだろう。次は銃弾が飛んでくるはずだ。だが銃弾の流れは予想外にもすべてが真っ直ぐ結奈に向いているわけではなかった。あまりにも適当過ぎたのだ。

 「(マスター、これは一体・・・。性能を下げるようなダメージは未だ与えていないはずです。)」

 結奈の言葉が頭に流れてくる。確かに疑問に思うが、今はとにかく数発こちらに飛んできたものをきちんと防がなくてはならない。集中して銃弾を目で追う。練習の時は全く追いつけなかったものの、今は不思議と冴えている気がする。実際に追えなくはない。結奈が言っていた意識することの重要性がなんなのか掴みかけた気がした。そのとき、

 「マスター!またロックオンが外れています!しかもまたこの煙の量・・・。先ほどのは決して適当に放っていたのではなく、私たちの注意をそらすために!」

 「もろうたで!!!」

キンッ  甲高い金属音と左手に広がる痺れが緊張感を高めていった。いや、それ以上に事態の把握に追いつけなかった焦りから来る焦燥感だったのかもしれない。

 「TIME UP!!」

 「マスター、一体何が?」

 「失敗してしまいました。せっかくのチャンスだったのに、すみませんマスター・・・、マスター?」

 「(なんや、今のは・・・。まるで盾に吸い込まれるように攻撃を吸収された。後ろから攻めとるのに自然な体さばきで振り向きざまに・・・。面白い奴やで、自分は。ほんまにこれが初心者なんか?)」

 結局時間切れで累計与ダメージ率の高かったゲンさんとゆうの勝利、私たちは負けてしまった。だが、成長する実感を得たような気がした。少なくとも結奈との間に今までよりも信頼関係を築くことができた。今回はそれだけでも十分だろう。ゲンさん達と別れてから自宅に帰るまでの間に、私は一つ決心した。F3大会に出てみたい、そこで自分の実力を知りたい、もっと成長したいと思った。結奈は最初戸惑っていたが、私と一緒に挑戦したいと承諾してくれた。まだ見ぬ相手を心待ちにしながら眠りについた。

   第5話 完
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧