八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百五十六話 教会の中その十三
「お母さんからもね」
「そうなんですか」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「多分止さんの浮気のせいじゃないじゃないわね」
「お袋が出て行ったのは」
「犯罪でもないわね」
そのケースもないというのだ。
「どうやら」
「誘拐されたりとかですか」
「若しそうだと」
お袋が誰かに誘拐されたりしていたらならというのだ。
「事件だから」
「大騒ぎになってますね」
「ご一族の方々も動かれるでしょ」
「絶対にそうなってますね」
「警察も動いてくれるし」
千里さんは僕にさらに話してくれた。
「探偵さんだってね」
「雇われて」
「それも凄い腕利きの。そうね」
ここで千里さんはこうした探偵たちの名前を挙げた。
「シャーロック=ホームズとかエルキュー=ポワロとか」
「天才探偵をですか」
「そんな人達を雇ってるでしょうから」
「そうして必死に捜索されてますね」
「勿論ホームズもポワロも実在人物じゃないわよ」
ホームズの場合作中の事務所の住所に仕事の依頼の手紙が本当に来たりもしていたらしい。それは今もだろうか。
「けれどね」
「そうしたレベルの探偵さんをですね」
「雇われている筈だから」
「それでお袋は見付かっていましたか」
「どんな事件でもね」
お袋がいなくなった理由が事件ならだ。
「そうなっていたし。それにご夫婦の仲も」
「よかったです」
「私が見てもそうだったわ」
「お袋は結婚する前から親父のこと知ってましたから」
もうとんでもない遊び人で浮気ばかりすることもだ。
「けれどそんな親父のいいところを知っていて」
「それでだったわね」
「結婚しましたから」
親父のあれで人の道はわかっていてそこから外れないことをだ、遊ぶにしても相手は選んでいるしだ。
「だから今考えますと」
「止さんの女好きや遊び好きはね」
「理由じゃないですね」
こう思えてきた、今は。
「それにです」
「それに?」
「僕にはいい親父ですから」
とにかく無茶苦茶な生き方をしているけれどだ。
「絶対に第一ですからね」
「お料理も作ってくれてお家にも帰ってきて」
「はい、毎日どれだけ遊んでも」
このことは絶対だ。
「帰ってきます」
「締めるところは締める人ね」
「はい、本当に」
「私もそう聞いてるしお会いしてもね」
「そうした人間に思えますね」
「実際にね、だからね」
それでというのだ。
「お母さんがいなくなった理由は」
「他にあるんですね」
「事件でも止さんが原因でもないわ」
「居場所全然わからないんですよ」
今もだ。
「急に出ていくお袋でもなかったですし」
「ある日急にだったのよね」
「そうでしたから。いなくなってもお袋がどうとかいう人いなかったですし」
今もいない、こうした時はよく男が出来たんじゃないかとか言う人がいたりもするものだというけれどだ。
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