夢幻水滸伝
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第五十五話 武蔵と箱根でその三
「もう流れは完全にあっちのもんや」
「そうなるからですね」
「そや、ほんまにや」
「棟梁が敗れてはならない」
「総大将自らの出陣には常にリスクがある」
それがどれだけ強い者でもとだ、芥川は雅に険しい顔で話した。
「それはや」
「総大将を討たれればですね」
「国が危うくなる、下手したらそれで潰れる」
「そうなりますね」
「僕等が起きてる世界でもあったわ」
こうした話はというのだ。
「龍造寺家とかな」
「九州の戦国大名でしたね」
「総大将自ら出陣してや」
薩摩の島津家との戦に主である龍造寺隆信自身が出陣した、そうして沖田畷でその首を取られたのだ。
「惨敗したわ」
「総大将を討たれ」
「もうそれで龍造寺家は終わった」
九州の覇権争奪戦から完全に脱落してしまったのだ。
「もう島津家に押されっぱなしになった」
「そうしたことになるからですね」
「そや、総大将がやられるとな」
「その勢力にとって大きな危機ですね」
「そうなるからや」
それだけにというのだ。
「総大将自らの出陣はリスクが伴う」
「それもかなり大きな」
「それでや、今回の綾乃ちゃんの出陣もな」
「その危険がありますね」
「若し討たれるとな」
それこそというのだった。
「やばいで」
「その通りですね」
「討たれると、な」
ここでこうも言った芥川だった。
「その場合はな」
「致命的です、我々にとって」
「そや、しかしな」
ここでだ、芥川は不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「それは総大将が討てる場合でや」
「討てないならですか」
「意味はないで」
「それだけ、ですね」
「綾乃ちゃんは強い、実はな」
「我々の中で」
「最強や」
そこまでの者だというのだ。
「あの娘はな」
「星の者の中でも」
「そや、実は僕や中里よりも強い」
「三極だけあってか」
坂口は眉を鋭くさせて芥川に問うた。
「それでだがや」
「三種の神器で護りは完全でな」
綾乃の強さの理由をだ、芥川は坂口そして今その場にいる星の面々に対して確かな声で話した。そこには絶対の信頼があった。
「八岐大蛇までおるんや」
「それでか」
「そうや、それに四つの術を全部使える」
魔術師、僧侶、錬金術師、超能力のそれをだ。綾乃は星の者が職業に関わらずマスター出来る術を全て使えるのだ。
「しかもその術は全て本来使えるモンと同じだけ強い」
「それだけ揃ってるからだがや」
「僕等の中で一番強い、格闘戦は出来んが」
それでもというのだ。
「そうそう簡単にはやられんで」
「そやな」
「そうや、負ける筈がないわ」
それこそというのだ。
「あの娘はな」
「ですが奇襲を受けた場合は」
「その時は」
滝沢と正宗が聞いてきた。
「どうなりますか」
「軍全体が」
「それはもう向こうも察してる、綾乃ちゃん達もな」
彼女と共にいる他の面々もというのだ。
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