夢幻水滸伝
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第五十四話 東西の戦その十三
それを見つつだ、宮子は傷付いた兵達に薬を出しつつ言った。
「傷も手当しそうして」
「戦い続けることですね」
「そうしていきますね」
「この城を守る」
「最後の最後まで」
「その意気で戦っていきましょう」
宮子もこの城はやがて一旦放棄することは知っている、しかし兵達にはそのことを隠してこう返した。
「敵は多いです、ですが」
「それでもですね」
「東国武士の誇りを見せてやりましょう」
「とことんまで戦いましょう」
「そうしていきましょう」
「そうです、ここは意気です」
戦おうというそれが必要だというのだ。
「いいですね、では」
「はい、傷が癒えたらまた戻ります」
「体力が回復したなら」
「すぐに戦の場に戻ります」
「そうします」
「私の調合する薬は僧侶や錬金術師の術と同じです」
徐々に回復していくものではないというのだ。
「即座に傷を癒し体力も回復させます」
「それで、ですね」
「この度もですね」
「傷を癒してくれる」
「それで我々もすぐに戦の場に戻られますね」
「萩原さんの薬で」
「そうです、復活の薬も調合出来ます」
そこまでのものが出来るのだ、それが都の薬の調合術なのだ。
「安心して戦って下さい」
「この城は上野の要ですからね」
「何としても守らないといけません」
「かなり押されているのは事実ですが」
「それでも戦っていきましょう」
「踏ん張りどころですので。お願いします」
宮子は嘘は言わなかった、隠しているものはあっても。東国の者達は押されつつもそれでも果敢に戦っていた。
だが戦の状況を見てだった、室生は自らも攻めているその中で言った。
「攻め落とせるな」
「この勢いではですね」
「無事にですね」
「それが出来ますね」
「多少壊し過ぎているが」
石垣や門、櫓等城内のものをというのだ。
「しかしそれでもだ」
「攻め落とすことは出来ますね」
「それは可能ですね」
「そうだ、城は工兵達を中心に修繕する」
そうもしてというのだ。
「下野にも進もう」
「そうしていきますね」
「この城を攻め落としたなら」
「この城を拠点として」
「そうなる、ではこのまま攻めていく」
室生も攻めることを命じた、今は関西の軍勢も気を張っていた。そうして厩橋城を攻め落とすことを確実なものにさせた。だが戦はまだはじまったばかりということを多くの兵は知らなかった。これからということを。
第五十四話 完
2018・2・15
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