| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

夢幻水滸伝

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十三話 東国その十

「棟梁一人行かせはしない、私もその時は共に行く」
「私だってそうよ」
 麻友も幸田に眉を怒らせて言ってきた。
「葛飾でずっと一緒にいて今だってじゃない」
「それは御前がおいらを追いかけてきてるからだろう?」
 幸田は苦い顔でその麻友に返した。
「八条学園まで、しかも寝ても一緒なんてな」
「だって幼馴染みだから」
「そういう問題か?」
「そういう問題よ、けれど私は吉君とずっと一緒にいるって決めてるから」
 それでというのだ。
「その時は私もね」
「一緒か」
「そうよ、一緒に行くから」
「そうしてくれるんだな」
「当たり前でしょ、吉君に何かがあったら」
 その時はというのだ。
「私が全力で止めるからね」
「全く、気が強いな」
「これでも合気道二段だしね」
「それでか」
「そうよ、吉君は私が守るから」
「女守れんで何が男なんだよ、その言葉はおいらの言葉だよ」
 幸田は麻友の自分を守るという言葉に逆に怒った感じの顔で反論した。
「御前がおいらが守る」
「だからそこはね」
「御前がおいらをか」
「そうよ、子供の時みたいによ」
「子供の時って幼稚園の時だろ」
「それでもあの時は私が吉君を守ってたでしょ」
「そんな昔のことまで言うなよ」
 思わずまた言い返した幸田だった、だがその二人に武者小路が呆れた様な顔になってそれで言った。
「まあまあ、夫婦喧嘩は犬もよ」
「夫婦と違うぞ」
「そうよ、もう恋女房よ」
 二人はそれぞれその武者小路に言った。
「そこは間違えないで」
「おい、何時恋女房になった」
「ずっと前からよ」
「おいら知らないぞ」
「だからね、そういうことじゃなくてこうした時は一緒でしょ」
 武者小路は言い合いを続ける二人に呆れつつもさらに話した。
「九人共」
「ってことは」
「そうよ、棟梁と麻友ちゃんだけじゃなくてね」
 武者小路は幸田に笑って話した。
「あたし達全員もよ」
「言うまでもないことです」
 遠藤も笑って言ってきた。
「このことは」
「言うまでもないか」
「はい、棟梁に何かあれば」
 まさにその時はというのだ。
「我等も同じです」
「おいらと一緒に捕虜になりに行くか」
「そうします」
 遠藤が微笑んで言うと人の星の者達もえ笑みを浮かべて頷いた、彼等の考えはこのことでも同じであった。
「何があろうとも」
「そうしてくれるか」
「当然のことだ」
 日毬は怒った顔で幸田に言った。
「我等もまた星の者だからな」
「それでか」
「そうだ、何がってもだ」
 敗れ降ってもというのだ。
「お主だけ行かせることはしない」
「おいらは棟梁だからと思っていたが」
「我等も星の者達だからだ」
 またこう言った日毬だった。
「その時も同じだ」
「そうか、悪いな」
「悪くはない、しかしだ」
「そうだ、勝った時も敗れた時もだ」
「同じか」
「いる場所はな、それでだが」
「ああ、今からな」
 幸田はあらためてだ、日毬に応えて話した。
「上野に行くぞ」
「厩橋城か」
「ああ、まずはあそこに入る」
 上野において最も重要なこの城にというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧