八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百五十四話 青い空その七
「本当にね。あの人が執事でいてくれて」
「そのこともなのね」
「嬉しいよ。八条荘のことなら」
「あの人がなのね」
「大抵やってくれているし」
本当に何もかもをだ。
「僕はいるだけだって思っていたけれど」
「それがね」
「違うんだね」
「義和はいい管理人さんよ」
お話を聞いて仲を取り持ってくれてというのだ。
「何もしていない訳じゃないわ」
「だといいけれど」
「畑中さんもそう思ってくれていると思うわ」
「あの人に悪いことを言われたことはないよ」
それどころか何かあればすぐに相談に乗ってくれて解決案を話してくれる、お話を聞くと八条家で働いている人の中でも一番の人らしい。
「一度もね」
「いつもお話をしていて」
「助けてもらってるよ。どうもね」
「どうも?」
「畑中さん親父のことを好きみたいだし」
一族屈指のお騒がせ人物である親父をだ。
「僕にもね」
「よくしてくれているの」
「親父のこともいつも褒めてくれて」
「親御さんを褒めてもらえたら嬉しいわね」
「うん、確かにとんでもない親父だけれど」
酒好きで何よりも女好きの遊び人だけれどだ。
「悪口を言われるとね」
「義和もよね」
「いい思いはしないよ」
普通は親の悪口を言われるとそうだと思う、もっとも親子の関係が悪いと自分から言う人もいるらしいけれど。
「やっぱりね」
「そうよね」
「だからね」
「そのことからもなのね」
「僕は畑中さんが好きだよ」
こう友奈さんに話した。
「本当にね」
「そうなのね」
「信頼しているかって言われたら」
「実際にそうで」
「それにね」
さらにだった。
「いつも頼りにしていて」
「相談にも乗ってもらっていて」
「何ていうか」
ちょっと言葉を選んだ、この場合どう言っていいのか少しわかりかねて。
「僕にとっては後見人さんかな」
「そうした人なの」
「そんな感じだよ」
家族ではないけれど掛け替えのない人だからだ。
「僕にとっては」
「そうなの」
「うん、だからね」
「頼りにしてるのね」
「ずっとね」
八条荘に入ったその時からだ。
「あの人がいてくれたからっていつも思ってるよ」
「何か義和にとって畑中さんとの出会いは」
「運命かな」
こう友奈さんに話した。
「それもいいね」
「素晴らしい人に出会えたから」
「そうも思うよ」
実際にだ、僕はこう思っている。
「やっぱりね」
「そうなのね」
「畑中さんのことは知らなかったけれどね」
はじめてお会いするまでだ、あの人のことは本当に知らなかった。
「八条家にあの人が務めておられることもね」
「知らなかったの」
「八条家って大きな家だから」
何しろ世界屈指の企業グループを経営している一族だ、その数もかなり多い。このことは八条家が代々子沢山であることも関係している。
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