八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百五十四話 青い空その六
「その都度ね」
「そうなのかな」
「ええ、いつもね」
「それで仲が悪くなりかけても」
「それを収めてくれているのよ」
「僕そんなことしてたんだ」
よく話を聞いていると言われるとそうだと思う、今もこうして友奈さんと一緒にいてお話を聞かせてもらっている。
「そうだったんだ」
「ええ、いつもね」
「そしてそれがなんだ」
「管理人さんのお仕事なの」
「そのうちの一つで」
「よくやってくれているわ」
「だといいけれどね」
心から思った、そのうえで友奈さんに答えた。
「僕も」
「そのことは安心してね」
「それじゃあね。けれど僕よりも」
「畑中さんかしら」
「特にあの人に助けてもらってるよ」
本当にだ、あの人には。
「何かとね」
「そうなのね」
「あの人がいてくれなかったら」
それこそだ。
「最初からどうなっていたか」
「わからないの」
「うん、本当に」
それこそだ。
「お家を出た時も」
「その時は確か」
「うん、いきなり放り出された形だったから」
親父が急にイタリアに行ってだ、とりあえず学校はそのまま行くにしても肝心のお家は何処になるのか全くわからなかった。
その時を思い出してだ、僕は友奈さんにさらに話した。
「全く何もね」
「するべきなのか」
「わからなくて考えることも」
このことすらもだった。
「出来ない状況で」
「その時になのね」
「畑中さんがいてくれたから」
それでだった。
「助かったよ」
「そこに来てくれたのね」
「そうだったんだ」
本当にだ、そのどうしていいのか考えることすら出来なくなっていた僕のところに来てくれたのだ。
「それで何かとね」
「助けてもらったのね」
「まあまさかね」
あの時のことを考えると奇跡みたいだ、そして僕はその奇跡の上で今こうしてこの八条荘にいる訳だ。
「ここの管理人になるとかね」
「ご本家が決めておられたのよね」
「何時の間にかね、今思うと」
本当に今の穏やかな中にいるとだ。
「呆然となることでもなかったけれど」
「その時は違ったのね」
「どうなるかわかっていなかったから」
それこそ何一つとしてだった、家を出て畑中さんが来てくれるまでのほんの一瞬のことであったけれど。
「呆然となっていてね」
「これからどうなるかって」
「途方に暮れていたよ、けれど」
「そこに畑中さんが来てくれて」
「終わったよ」
その不安な時がだ。
「有り難いことにね」
「だから畑中さんを特になのね」
「頼りにしているんだ」
八条荘で働いている人達の中でもだ。
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