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夢幻水滸伝

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第五十二話 東国からの使者その二

「こうしてサングラスかけてるんやけどな」
「あの人もやな」
「そうしてるんやな」
「そういうことやな」
「そや、しかしあの人は目だけやないやろ」
 若い赤目はこうも言った。
「そやろ」
「ああ、目だけやないな」
「剣士、剣客としてな」
「物凄い強さや」
「たった一人で千人の賊も無傷で切り伏せたこともあるっていうしな」
「めっちゃ強いで」
「しかも心も強い」
 若い赤目は背筋をぴんと伸ばして前に進む日毬を見つつさらに話した。
「精神力もな」
「らしいな、とことんまで」
「それも相当にな」
「それで下手に精神系の術かけても全く通じん」
「魔術師や僧侶の術も刀で切り払うこともあるらしい」
「ほんま強いらしいな」
「心の方も」
 都の者達もこのことを話した。
「相当に強いっていうな」
「心身共に」
「まさにまことの剣客か」
「そしてその剣客が使者として来たんやな」
「この都に」
 都の者達は今も日毬を見ている、大路に出ている者は皆道を左右に開けてそうして日毬を遠巻きに見ている。日毬はその彼等に目をやらず正面を見たまま供の者達と共に毅然とした態度で歩き続けている。
「緊張するな」
「御所に入って何を話すんやろな」
「うちの姫巫女様に」
「まさかその場で姫巫女様と一騎討ちとか」
「そういうのするんか?」
 こうした話もここで出た。
「いきなり大将首取るとか」
「アホ、こっちには中里さんと芥川さんがおるんやぞ」
 武で名高い二人がというのだ。
「そんなんさせるか」
「そや、お二人にそうそう勝てるか」
「姫巫女様を切ろうとした瞬間にお二人と勝負や」
「幾ら強うてもお二人には勝てん」
「だからそれはないわ」
「絶対に大丈夫や」
「ただ東国の考えを伝えに来ただけやろ」
 こう推察する者の意見が主流だった。
「それだけや」
「そやな、ここはな」
「それはないわ」
「まず大丈夫や」
「そこまではないわ」
 そして他の者達もそうした意見に頷いた、だが日毬の発する強くそして純粋なオーラも感じてだった。
 都の者達は緊張していた、日毬はその緊張の中を進んでいた。
 その日毬を御所の正門から見据えてだ、太宰は傍にいる室生に言った。
「噂以上に、ですね」
「そうだな、強い気だ」
「鋭く強くそして」
「純粋だな」
「起きている世界ではです」
 太宰は彼等の本来の世界での日毬のことも話した。
「文武共に優秀で生活態度もよく」
「非のうちどころがないな」
「はい、ただ」
「純粋過ぎるな」
「日本という国を愛し」
「右翼と言われることもあるな」
「それもかなりの」 
 普通の右翼ではなく、だ。
「極右とさえです」
「戦前の日本、いや北一輝のそれを思わせる」
「極端な主張をしています」
「かといって偏狭な民族主義者でもない」
 室生は日毬の思想について知っていた、それで太宰にこうも話した。 
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