夢幻水滸伝
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第五十二話 東国からの使者その三
「しかも公平だ」
「誰に対しても」
「決して悪人ではない、いやむしろ」
「善人ですね」
「そう言っていい方です」
太宰も日毬のことを知っていて言う。
「卑怯卑劣とは正反対の場所におられ」
「差別とも戦う主義だ」
「八紘一宇でしょうか」
戦前の日本が国是として掲げていたものだ、世界の全ての者が公平かつ平等にあるべきだという考えと書くとわかりやすいだろうか」
「その思想の持ち主ですね」
「そうだな、確かに極端に右寄りだが」
「しかしです」
「差別をせず公平なのは事実だ」
「美点の多い方です」
「そうだな、そしてだな」
「その方がです」
今こうしてと言うのだった。
「来られました」
「東国からの使者としてな」
「そうですね、では」
「そうだ、これからだ」
「我々がお迎えして」
星の者達のうちから彼等がだ。
「姫巫女様のところに案内致しましょう」
「これからな」
「その際ですが」
「気圧されないことだ」
決してとだ、室生は言った。
「それが大事だ」
「そうです」
太宰も室生にはっきりと答える。
「あの強い気にもです」
「そうだ、だが向かうのではなくな」
「受けてです」
「そうして止める」
「そうした対応であるべきです」
「これが坂口や北原だとな」
彼等ならとだ、室生は同志である彼等のことも思った。
「向かうな」
「強い気には」
「だから彼女への応対はだ」
「我々が務めます」
「同じ天の星の者の中からな」
関西にいる彼等の中でだ。
「そうなったが」
「それでもですね」
「私も感じる」
室生は日毬を見つつ太宰に話した。
「凄まじい気だ」
「まさに真剣勝負の様な」
「正しく澄んでいる気だな」
「しかも大きい」
「歪んでいるものはない」
一切というのだった。
「生き方が出ているな」
「そうですね、そしてその彼女を」
「今から迎えよう」
二人は日毬、御所に来る彼女を待っていた。そしてその日毬もだった。
後ろに控える供の者達にだ、高く澄んだ硬質の声で言っていた。
「よいか、これよりだ」
「はい、御所に入り」
「そして関西の棟梁であられる紫殿とお会いし」
「我々の考えをお伝えするのですね」
「そうだ、それが私の今回の役目だ」
日毬は供の者達に述べた。
「その為にここまで来た」
「はい、まさに」
「それ故にですね」
「この都まで来たのですから」
「棟梁殿の意志を伝える」
東国の棟梁である幸田のというのだ。
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