夢幻水滸伝
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第四十八話 再戦その十
「蟹は好きですが」
「手間がか」
「はい、困ります」
そうだと言うのだった。
「どうにも」
「そうなのか」
「はい、お言葉ですが」
「私としてはやはりな」
「中身を出してですが」
「それが醍醐味の一つだがな」
こういうのだった。
「蟹はな」
「そこは人それぞれですな」
「そうだな、だが味はだな」
「好きです」
正宗はこれは確かだと答えた。
「やはり」
「そうか、では蟹を食して他のものもだ」
「葱や白菜、豆腐も」
「そしてしらたきもな」
この茸もというのだ。
「食べるとしよう」
「わかり申した」
「全員でな」
「そうじゃ、盛大に食ってじゃ」
今度は坂口が言ってきた。
「あったまって力つけてじゃ」
「そうしてですね」
鈴子が応えた。
「そのうえで」
「奇襲じゃ、一気に勝つんじゃ」
そうすると言うのだった。
「絶対にじゃ」
「そうですね、兵の人達も食べていますし」
「この蟹鍋をじゃな」
「はい、今年は豊作でして」
この世界の今年ではだ。
「蟹が多く手に入りましたので」
「買えてか」
「加賀でも」
「それはええことじゃ」
「実は関西や東国にも売っています」
敵対している彼等にもというのだ、東国は今は講和しているが基本的にはそうした間柄であるのは事実だ。
「そうして儲けています」
「それはええことじゃ」
「いいことですね」
「敵でも売るものは売るだがや」
坂口は笑って鈴子に話した。
「だからじゃ」
「蟹もですね」
「売って儲かるならだがや」
「売るべきですね」
「敵に売らんとか了見の狭いことは言わん」
これが坂口の考えだった。
「どんどん売ってじゃ」
「そうしてですね」
「儲けて力にするんじゃ」
「それが勢力のあるべき姿ですね」
「そして国のな」
「統一した後も」
「そうだがや、術で冷凍させた蟹をだがや」
「他の魚介類もですが」
蟹だけでなかった、売っている海の幸は。
「今年は蟹を討っています」
「ええことだがや」
「日本はこちらの世界でも海の幸が豊富です」
雅も言ってきた、こちらの世界でも見事な胸を揺らしつつ食べている。
「ですから統一の暁には」
「各国にだがや」
「海の幸を売ってです」
「大儲けだがや」
「そちらでも」
他のものも売ってというのだ。
「そして言うまでもなくです」
「民達もだがや」
「楽しんでもらいましょう」
そうした海の幸を買って食べてというのだ。
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