夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第四十八話 再戦その九
「だからだ」
「補給もいけるわ」
「この金沢城を拠点として攻めてだ」
「越前を攻略してな」
「今度は越前の北ノ庄城を拠点にして一気に近江に入り近江をさか上りな」
それこそ関西の軍勢が動くより速くだ。
「都を攻め落とすぞ」
「そうするだがや」
「必ずな、では今からな」
「飯じゃな」
「用意が出来たら食べよう」
「それで何が出るんじゃ」
その飯のことをだ、坂口は室生に尋ねた。
「一体」
「この加賀の海の幸を使った鍋だが」
「蟹か」
「そうだ、蟹鍋だ」
まさにそれだとだ、室生は坂口に答えた。
「それだ」
「そうか、蟹鍋か」
「好きだったら」
「好物の一つじゃ、しかし」
坂口は室生に顔を向けて天狗のその顔を笑わせて彼にこう言った。
「それはむしろな」
「私がというのだな」
「そうじゃ、好きじゃな」
「君が好物なら私は大好物だ」
笑みを浮かべてだ、室生は坂口に答えた。
「蟹鍋はな」
「そうじゃな」
「蟹は好きだ、特にな」
「蟹鍋じゃな」
「鍋はどれも好きだがな」
「蟹鍋がじゃな」
「一番好きだ、では星の者達を集めてな」
東海及び北陸の彼等をというのだ。
「食べるとしよう」
「是非のう」
こう話してそしてだった、坂口達は金沢城の本丸で六人全員で蟹鍋を食べはじめた。その蟹鍋を食べながらだった。
その時にだ、滝沢は蟹の身を出して食べながらこんなことを言った。
「蟹はやはり」
「中をですね」
「出すのがな」
どうにもという顔で美鈴に言うのだった。
「困るな」
「困るというかな」
「手間がかかりますね」
「美味しいがな」
「はい、どうしても」
苦い顔での返事だった、美鈴にしても。
「そこが困りますね」
「だがそれがいい」
ここでこう言ったのは室生だった。
「違うか」
「手間がかかるからですか」
「その手間をかけてだ」
そのうえでというのだ。
「中身をあえて食べるのがな」
「いいですか」
「私としてはな、子供の頃からだ」
起きた時の世界での話もするのだった。
「蟹はそうして食べてだ」
「楽しんでおられますか」
「昔からな」
「北陸ですね、そこは」
「そうかもな、北陸はやはりな」
「海の幸、その中でも」
「蟹だ」
一言で言い切った室生だった。
「ズワイガニだ」
「まさにこの蟹ですね」
「そうだ、あえて手間をかけてな」
「食べてですか」
「楽しむものだと思うが」
「そこは人それぞれですね」
「どうも拙僧としましては」
今度は正宗が言ってきた、毛人の巨大な手で蟹を食べているがズワイガニがザリガニ位の大きさに見える。
ページ上へ戻る