八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百四十八話 イルカその十
「あの作品の中には素晴らしいものが山みたいにあるんだ」
「宝石箱みたいね」
「そうだね、宝石箱だね」
本当にそう言っていい、ドラえもんは。
「色々な素晴らしいお話そこに含まれているテーマがあって」
「読んでいるとですわね」
「それが貴重な財産になっていくんだ」
読んだ、観たその人のだ。
「そうした作品なんだ」
「そこまで素晴らし作品ですのね」
「そうなんだ」
ジョーンさんに心から話した、いや話せた。
「あの作品は」
「では帰ったら読んでみますわ」
「八条荘の書斎にもあるから」
劇場版の大長編を含めて全巻だ、一度終わっている六巻のあの最後の場面もちゃんとある。
「読んでみてね」
「そうさせてもらいますわ」
「私も読んでみる。ただ」
「ただ?」
「私は鼠は平気」
ドラえもんと違って、というのだ。寝ている間に耳をかじられてなくなってその姿を鏡で観て青ざめて今の姿になったのは有名な話だ。
「あれは」
「ああ、鼠は」
「病原菌があっても」
「ペストですね」
「今は殆どないし」
まだたまに出たりするけれどだ、日本では天然痘はともかくこの疫病には殆ど縁がない。幸いなことに。
「余計に平気」
「生理的嫌悪感も」
「ない」
そちらもというのだ。
「欧州の人達みたいに」
「あっちがペストの本場ですからね」
歴史上とんでもない流行を経てきた、ローマ帝国の頃もあったという。
「何度も大流行して」
「凄い死んでるから」
何か中世の大流行では人口の三分の一が死んだらしい。
「今だに」
「凄い警戒されてますね」
「中国やアメリカでもそうだけれど」
こういった国々でも流行したことがあるとのことだ。
「欧州は特に」
「本当に本場で」
「だから今も鼠は」
「怖がられてるんですね」
「そう聞いている」
「あの笛吹き男も」
ハーメルンの笛吹き男だ、実際にいたというから不気味だ。
「どうして鼠が怖がられていたか」
「ただ街を荒らすんじゃなくて」
「ペストですね」
「それがあったから」
むしろこちらが怖かったとのことだ。
「恐れられていた」
「そうでしたね、子供の頃はそれを知らなかったです」
ペストのその存在をだ、だからあの童話を読んでもどうして鼠がこんなに怖がられているかわからなかった。
「とても」
「日本にいると」
「どうしても」
本当にだった、子供の時の僕は。
「わからなかったです」
「日本は疫病が流行りにくい」
そうした国だというのだ。
「だから」
「ペストもなんだ」
「縁がなかった」
「そうなんだね」
本当に聞かない、日本ではだ。
「幸いだね」
「我が国でもそうでした」
「元々のルーツの国はね」
ニュージーランドの人達を移住という形で送ったイギリスではだ。
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