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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百四十八話 イルカその七

「あそこはそんなカラーかな」
「癒しですのね」
「こっちは穏やかでね」
「そして八条水族館は」
「あそこは何でもかな」
「何でもですね」
「色々いるから」
 鳥羽水族館以上にだ、勿論大阪の海遊館や京都の水族館よりもだ。
「だからね、何でもかな」
「そうですの」
「うん、海遊館はレジャーでね」
 この水族館はそうしたカラーだろうか。
「八条学園の方はね」
「何でもですのね」
「そんな感じがするね、剥製も深海魚も多いし」
「深海魚といいますと」
 ここでジョーンさんが言った生きものはというと。
「リュウグウノツカイですわね」
「あそこの水族館に剥製あるね」
「あのお魚も大きいですわね」
「五メートルあるからね」
 その剥製だけでもだ。
「かなり大きいよ」
「そうですわね」
「ただ、深海にいるし捕まえてもね」
「何かすぐにですわね」
「死ぬんだよね」
 何でもある水族館が水槽に入れて飼育をはじめたけれど一時間もしないうちに死んでしまったらしい。
「これが」
「だからよくわかっていないのでしたわね」
「まだね」
 深海生物には多いことみたいだし深海自体もだ、人類はまだまだ地球のことを知らないのだろう。
「謎の生きものだよ」
「そうらしいですわね」
「しかも海面に出て来たら」
 その深海からだ。
「海が荒れるっていうし」
「不吉の象徴ですか」
「そうも言われているよ」
 漁師さん達はよくこう言っていたらしい、漁師さんにとっては海が荒れると大事であるからだ。
「あのお魚は」
「そうですか」
「うん、海が荒れるから」
 それ自体が凶兆だからだ、海で生きる人達にとっては。
「出て来るとね」
「そういうことになりますのね」
「そうなんだ」
「リュウグウノツカイはそうしたお魚ですの」
「何かね」
 この不思議なお魚について僕はさらに話した。
「細長い身体だよね」
「はい、かなり」
「それでも横に泳がないみたいだし」
「横に?」
「頭を前にして泳ぐね」
 多くの魚の泳ぎ方だ。
「それじゃないっていうし」
「ああ、普通のお魚の泳ぎ方ですわね」
 ジョーンさんもここで気付いた。
「それですわね」
「そうなんだ、それがね」
「泳ぎ方も違うんですね」
「頭を下にしてタツノオトシゴみたいにして」
「そうしてですの」
「泳ぐらしいんだ」
「あの細長い身体で」
 ジョーンさんはまるでお伽話を聞くみたいな顔になってそのうえで僕に聞き返してきた。信じられないとった感じだった。
「それはまた」
「嘘みたいだよね」
「はい、どうにも」
「けれどね」
「実際にそうしてですのね」
「頭を下にして身体を縦にしてね」
「そうして泳ぎますのね」
 その不思議で仕方ないといった顔での返事だった。 
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